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2019年10月2日

JICA技術協力プロジェクトによりコソボ共和国の皆さんが来所し、大気汚染物質の排出インベントリ・大気質シミュレーションの研修を受講されました

令和元年9月9日(火)、JICAによるコソボ共和国(以下コソボ)への技術協力プロジェクト研修のため、コソボの環境省、気象研究所、大学などから12名の皆さんが来所されました。

今回の研修では、コソボの深刻化する大気汚染の改善のために省や研究所がどのような役割を果たすことが必要か、日本や他国では大気汚染物質の排出インベントリや大気質シミュレーションがどのように利用されているのか、自国でどういったことができるのかを知り、施策に活かしたいとのことで、地域環境研究センターの茶谷聡主任研究員(大気環境モデリング研究室)が講義を行いました。

写真1:国立環境研究所玄関前で撮影した集合写真

コソボは2008年2月に独立を宣言し、日本では同年3月に国家と承認された南欧に位置する若い国で、これまでは経済復興と社会発展に重点が置かれ、環境分野への取組みはあまり重要視されてきませんでした。

写真2:講義が始まる前の皆さんです

数年前からJICAの協力を得て大気汚染問題に取組みはじめ、当初は老朽化した火力発電所からの排ガスが主な汚染の原因と考えられていましたが、実は70%の家庭で使用している薪や石炭による暖房が原因の多くを占めていることがわかってきました。

しかし、コソボでは12箇所に増やしてきたというモニタリングステーションのデータが正確性に欠け、シミュレーションを検証するまでに至らず、産官学や中央政府と地方の連携もないなど新たな課題も見つかりました。

そのため講義後の質疑応答では、より根本的な問題解決のための意見交換が活発になされました。同席された森川先生(日本自動車研究所)と若松先生(愛媛大学)からは、「地味ではあるがモニタリングは続けてこそ面白く、わかることがあるので継続を」、「各家庭の暖房が大気汚染物質の主な発生源ならばその発生の仕組みを解明することも大切」、など具体的なアドバイスもありました。今後はシミュレーションを進めつつ、モニタリングステーションのメンテナンス管理や取得する大気汚染物質の数を増やして成分分析にも力を入れていきたいそうです。

写真3:「排出量に対する大気汚染物質濃度の非線形性」を説明中の茶谷主任研究員(左奥)とアルバニア語通訳の方(手前)

研修の最後には、コソボの国を型どった盾をお土産にいただきました。今回の研修がコソボの大気汚染改善の一助となれば幸いです。

写真4:盾を贈られる若松先生(左から2番目)と茶谷主任研究員(左から3番目)

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