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2021年8月6日

大気モデリング研究室

NEWS

研究テーマ

大気シミュレーション精度向上のための大気モデルの構築と改良と、排出インベントリ、大気汚染予測計算結果など、大気環境データの整備・解析・発信に関する調査研究を行います。

研究課題

◼︎シミュレーションモデルや大気汚染予測システムの開発・改良

モデル開発
PM2.5やO3生成に関わる化学反応モデルの改良に取り組んでいます。エアロゾル生成においては有機化合物、O3生成に関わる多相反応においてはラジカルと金属の役割に着目し、室内実験・大気観測グループと連携しながら研究を進めております。

VENUS開発
環境省からの受託を受け、国立環境研究所がこれまで開発してきた大気汚染予測システムVENUS(Visualatmospheric ENvironment Utility System)の改良に、所内の環境情報部等との共同により取り組んでいます。毎朝、数日後までのPM2.5や光化学オキシダントの全国的な濃度を計算により予測しています。

 

◼︎大気汚染に関する地方環境研との共同研究

光化学オキシダントやPM2.5等の大気汚染問題について全国50弱の地方環境研究所と共同研究を続けており、現在は大気汚染の地域的な要因や気象的な要因を解明するために、いくつかの研究グループに分かれ、大気環境常時監視の測定データの解析や研究目的別の観測等を行っています。

 

◼︎シミュレーションによる地方等の独自大気汚染予測を支援するシステム・体制の開発と維持(政策対応研究)

地方自治体等が光化学オキシダント等の注意報やPM2.5の注意喚起および自治体独自の情報提供等を発する際に、貴重な判断材料となる情報を上記の大気汚染予測システムVENUSの計算結果に基づいて提供します。また、国や地方自治体等の検討会において数値解析を行う際に用いることのできる大気汚染シミュレーション支援システムを開発した上で、維持管理し、ユーザーサポートを実施・継続します。

 

◼︎排出インベントリの構築と対策による大気改善効果の評価

大気汚染の原因物質がどこからどれぐらい排出されているのかを集約した排出インベントリは、大気質シミュレーションへの不可欠な入力データです。日本国内のあらゆる発生源を対象に、原因物質の排出量を推計するとともに、それが過去~現在~将来にわたって、対策や社会的な要因によりどう変化するかを表現できる、排出インベントリの構築を進めています。また、この排出インベントリを用いた大気質シミュレーションにより、これまでに施されてきた対策による大気改善効果を定量化し、過去の実際の大気質の変化を再現できることを示すことにより、今後必要とされる対策による大気改善効果予測への信頼性を向上させようとしています。

 

排出インベントリやシミュレーションモデルに関連するデータやツールを、領域大気質モデル間相互比較プロジェクトJ-STREAMのサイトで公開しています。

◼︎気候変動・環境影響に対応するための研究

環境省環境研究総合推進費S-20-1(2021-2025年度で実施)に参画し、環境問題と気候変動対策において重要な物質である短寿命気候強制因子(SLCFs)に着目した研究を行っています。その中で当研究室では、SLCFsを計算することができる2つの数値モデル(MIROC-ESMおよびNICAM-Chem)を用いて、SLCFsに関連する排出源が変化したことによる気候や大気水循環の変動を地域ごと・組成ごとに定量的に評価します。最終的には、S-20-3により作成される影響緩和シナリオを適用した気候モデルによる将来予測を行います。 また、このような将来の気候変動によって、逆にSLCFs自体、とりわけその主成分である大気汚染物質が受ける影響について、より詳細な空間スケールを対象とした数値モデル(WRF/CMAQ)によって評価します。

 

◼︎高時空間分解能観測データの同化による全球大気汚染予測手法の構築(所内公募A)

本プロジェクトは、2020年度から2022年度までの3年間で行われています。次世代大気汚染物質輸送モデル(NICAM-Chem)を用いた地球規模での大気汚染予測のための手法を構築することが目的です。この実現のために、①NICAM-Chemを用いた予測計算に重要なモデル初期値として、大気汚染物質データ同化の高精度な計算値を用いること、②全球静止化学衛星や地上/衛星ライダー等の様々な観測データを融合することで、高時空間分解能観測データを同化データとして利用すること、の2つの目標を立てています。これらの目標を達成することで、最終的な目的である大気汚染予測精度の向上に繋げます。

 

◼︎地球14km格子に区切った高解像度数値モデルで計算したエアロゾル量と世界各地の地上観測との比較

次世代全球大気モデルである正20面体格子非静力学モデルNICAMをベースとして、大気汚染物質を計算できるNICAM-Chemを用いた計算結果です。本結果は、世界で初めて地球14km格子の高解像度で3年間の長期積分を実施したエアロゾルの大気濃度です(Goto et al., 2020)。世界中の都市部・砂漠・風の強い海上でエアロゾルが多くなっています。モデル性能を検証するために、世界中の観測データを収集しました。観測データとモデル結果を比較したところ、モデル再現性は概ね良好でしたが、改善の余地があり、今後もモデル改良を行なっていきます。

 

メンバー