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2020年3月19日

動画「UMININA ~すべては捕獲から始まった~」を公開

地域環境研究センター海洋環境研究室主任研究員の金谷弦らの研究チームと企画部広報室は、「UMININA ~すべては捕獲から始まった~」を作成し、国立環境研究所動画チャンネルで公開しました。

なお、本動画は、「休校中の子供たちにぜひ見て欲しい科学技術の面白デジタルコンテンツ」(制作:JACST)にも掲載いただき、好評をいただいています。

「UMININA ~すべては捕獲から始まった~」

干潟をうごめく奇妙な生物UMININA。 ある晩、研究者K氏によって捕獲されたUMININAに異変が起きた。 撮影班はその謎を解くため、禁断の再現実験を行う。 水槽の中でいったい何が...!

■監修:金谷 弦、伊藤 萌
■編集・NA:久保園 遥
■撮影・録音:成田 正司
■BGM : MusMus

この企画は、干潟を愛する広報室スタッフ(久保園遙)が、地域環境研究センター海洋環境研究室主任研究員の金谷弦氏に、ウミニナに着目した動画の作成の相談を持ち掛けたことがきっかけで始まりました。

作中で研究者K氏として登場する金谷主任研究員

質問
久保園:広報室の久保園より、ウミニナの動画を作成したい旨の相談が来たとき、率直にどう思いましたか。

回答
金谷さん:素直にびびりました。えー!国環研の広報教材で、ウミニナという地味なネタで良いのでしょうか。 いや、良くない。もっと華々しい人・ネタがうちにはあるはず。 けど、撮影してもらったら、かつて無い感じの素晴らしい動画になりました。少し自信がでました。

また、動画の制作には、地域環境研究センター海洋環境研究室特別研究員の伊藤萌さん、広報室カメラマンの成田正司さんにもご協力いただきました。

質問
久保園:ウミニナはどこから来た子ですか?なぜ色付き?

回答
金谷さん・伊藤さん:宮城県利府町の櫃ヶ浦(ひつがうら)産のウミニナです。 色を付けたのは個体識別のためです。 干潟に設置したかごに、カラーパターンで識別できるようにした個体をいれて、逃げ出せないように蓋をかぶせ、数か月に一回とりだして、ウミニナの殻の成長を測っていました。 その後、2年間の実験が終了し、国環研へ持ち帰った個体です。

質問
久保園:ウミニナはどうして脱走したのですか?
水槽から脱走するウミニナ

回答
金谷さん:ウミニナって高いところが好きなのだと思います。 これは、干潟で生息する場所が、潮位のかなり高いところなのだと。 現場にカゴを置いておくと、カゴの上にたくさん登ってくるのはウミニナですし、石の上にもよくごちゃっと群れています。 標高の高いところだと、潮が満ちても、ろ過食できる時間帯は短いと思うのですが。

伊藤さん:ウミニナは、水没したり干上がったりする干潟のような環境に基本的には生息しています。 常に水中にいるような生き物でもないので、たまには外気に触れたいのかなと思うこともあります。 もしくは、「水中の酸素が減って苦しい」、「水質が悪化してそこにいたくない」なんていうのも考えられるかと。 飼っているウミニナが水槽の壁を上ることも、外に出て干からびることもよくあります。 1日2日くらいは外で乾いていても水槽に戻したらまた動き出します。 「近縁種のホソウミニナでは、幼貝のうちは成熟した個体に比べてよく移動する(壁を上る?)」という報告もあります。  

質問
久保園:撮影時の工夫を教えてください。
左が成田カメラマン、右が久保園係員

回答
成田カメラマン:ウミニナのろ過の様子を観察できるように断面でとらえて、行動範囲と水の濃度の変化が時間内に収まるように工夫をしています。

質問
久保園:この動画をどのように活用していきたいですか。

回答
金谷さん:ウミニナがろ過食をするというのは、あまり知られていないです。口で説明するより動画を見てもらうと早いので、今後学会のプレゼンや論文でも使いたいです。 あとは、大学生向けの講義とかですね。

伊藤さん:ナレーション等の入っていない動画は、以下の学会の口頭発表で使わせていただきました。
2019年日本ベントス学会・日本プランクトン学会・合同大会(開催日:2019年9月18日(水)~9月21日(土)) BO01 ウミニナ類巻貝 3 種の濾過能力と水温の関係 伊藤萌・金谷弦(国立環境研)・三浦収(高知大・農林海洋科学部)・中井静子(日大・生物資源科学部)
動画の評判は良かったです。ありがとうございました。

松川浦の泥干潟に嵌まってしまった伊藤特別研究員

質問
久保園:この動画をどんな方に見てもらいたいですか。

回答
金谷さん:やはり、若い人。子どもたち。干潟の生き物って面白いな、と思ってくれればと。

伊藤さん:研究者でも研究者以外の方でも老若男女問わず、いろんな人に見てほしいです。 一応、環境省レッドリストで準絶滅危惧に評価されている巻貝ではあるのですが、場所によってはすさまじい数のウミニナが群れています。 その光景に対して、「同じ貝ばかりいて、つまらないな」ではなく、「こいつらがアサリみたいに水を透明にしているのだな」と思っていただけるようになれば良いなあと思います。

久保園:この動画をきっかけに、環境研究や国環研に関心を持ってくれる方が少しでも増えてほしいと願っています。

地域環境研究センター海洋環境研究室
主任研究員 金谷 弦
特別研究員 伊藤 萌
企画部広報室  係員 久保園 遥
カメラマン 成田 正司

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