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2011年11月29日

ダーバン会合最大の論点とは?

 本日(29日)、京都議定書(以下、議定書)第1約束期間(2008~2012年)の後、国際社会がどのように温暖化問題に取り組んでいくかについて議論する、気候変動枠組条約の特別作業部会(AWG-LCA)と議定書の特別作業部会(AWG-KP)が開会しました。

写真1:議事を進めるメーシーAWG-KP議長(NZ)

 ダーバン会合で話し合われることはたくさんありますが、一番大きな問題になりそうなのが、2012年末に議定書第1約束期間が終わった後、国際社会が地球温暖化問題に取り組んでいく枠組みを一つにするか、二つにするか、ということです。

 議定書第1約束期間の後、国際社会がどのように地球温暖化問題に取り組んでいくかについては、冒頭に書いた通り、二つの場で議論が行われています。

 ひとつは、AWG-KPです。これは、CMP1(モントリオール(カナダ)、2005年)において設置されました。議定書第1約束期間の先進国の目標は、議定書の附属書Bに掲げられていますが、先進国の目標を第2約束期間のものに更新する(=附属書Bの改正)のが主な任務です。また、「第1約束期間と第2約束期間との空白がないように」作業を終わらせることになっています。ただし、このAWG-KPだけで国際社会の温暖化対策を議論するには限界があります。それは、議定書の下の作業部会なので、議定書を批准していない米国や、議定書では温室効果ガスの排出削減責務がないものの、経済発展に伴い、排出を大幅に増加させてきている途上国の排出削減について議論することができないことです。

 そこで、困難な交渉を経て、COP13(バリ(インドネシア)、2007年)において、もう一つの場、AWG-LCAが設置されました。ここでは、米国も大規模排出途上国も含む、すべての国の排出削減をはじめ、適応策、資金支援、技術支援など、国際レベルの温暖化対策について包括的に議論しています。ただし、ここでできる合意の法的性質は決まっていません。

 先進国は、「議定書の下で、先進国のみが温暖化対策をとるだけでは不十分であり、世界全体で取り組む枠組みが必要」という立場をとっています。先進国の中でも、条件付きならば議定書第2約束期間を受け入れる国と、第2約束期間を設置せずに一つの枠組みを目指すべきとする国とに分かれています。他方、途上国は、「議定書の下で、先進国が法的拘束力ある排出削減目標を持つことは、条約に掲げられている、共通だが差異ある責任原則の具体化である」として、議定書第2約束期間の設置を求めることで一致しています。先進国以外の排出削減については、合意に法的拘束力を持たせて新議定書にすべきとする立場と、法的拘束力を持たせるべきでないとする立場とに分かれています。

 第1約束期間の終了まで1年余りありますが、なぜダーバン会合でこのことが問題になっているのでしょう?それは、第1約束期間と第2約束期間との空白期間ができないようにするための最後の機会だからです。附属書Bの改正が有効になるまで、各国が批准してから90日かかります(図1)。来年のCOPも11月末の開会が予定されているため、ダーバン会合で合意できなければ、第1約束期間と第2約束期間との空白期間が発生します。

図1:議定書改正手続の流れ

 本日午前中のAWG-KP開会会合において、各交渉グループの代表がダーバン会合の成果に何を求めるかについて発言しました。先進国・途上国両者の立場は平行線のままで、とても難しい交渉になりそうです。アフリカグループの代表が「アフリカの土地を議定書の墓場にすることは認めない」と発言していたのが印象に残りました。また、制度設計を議論するうえでは、実に多様な要素(衡平性、環境十全性、実現可能性、制度の継続の容易さ、交渉経緯など)について考えなければいけないのだなと改めて感じました。

 今日、来年のCOP18/CMP8は、カタールで開催されることが発表されました。アジアで開催されるCOP18が成功するかどうかは、今回どのような合意ができるかによって大きく左右されます。ダーバンでの交渉の行方を見守り、その様子を皆さんにお伝えしていきたいと思います。

執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)

※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載