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2015年11月30日

COP21、始まる:COP21開会会合とリーダーズフォーラム(首脳級会合)

 11月30日(月)、パリ(フランス)において、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が始まりました。COP21は、2020年以降、国際社会がどのように温暖化対策に取り組んでいくかを決める非常に重要な会議です。世界中がこの会議に注目しており、約40,000人が参加登録をしているそうです。

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写真1:COP21会場正面玄関

 初日である今日は、COP21の開会会合と首脳級会合が開催されました。温暖化COPで首脳級会合が開催されるのは、COP15(コペンハーゲン(デンマーク))に次いで2回目です。

 COPの開会会合は、参加を希望する人が多いため、ここ数年、参加制限がかかっています。今回は、首脳級会合も併せて開催されることもあり、例年以上に厳しい参加制限がかかりました。今日、NGOがCOP21開会会合と本会議場に入場するには、会議への参加登録のほか、入場券のようなものが必要でした。筆者は、研究NGOの入場券抽選に当たったので、中に入ることができました。

 まず、COP21の開会会合が開催されました。冒頭、会議参加者は、潘基文国連事務総長の呼びかけに応えて、世界中のテロの犠牲者に黙祷を捧げました。

 同会合において、フランスのローラン・ファビウス外務・国際開発大臣がCOP21議長に選任されました。プルガル・ビダルCOP20議長(ペルー)からファビウス議長へと、木槌の引き継ぎが行われました。

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写真2:木槌(決議採択の時などに議長が使うもの)の引き継ぎ
(写真出典:COP20のペルーのサイト

 ファビウスCOP21議長は、議長就任スピーチにおいて、COP21の議長国としての役割について、すべての見解に耳を傾けること、会議の透明性と参加の包括性を確保すること、より野心的な合意ができないかを模索すること、国家間の妥結を確保すること、そして、できる限り、事務レベルでの合意を目指し、どうしても合意できない点だけ、2週目の閣僚級の交渉に送ることである、と述べました。

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写真3:ファビウスCOP21/CMP11議長

 クリスティーナ・フィゲレス気候変動枠組条約事務局長は、「パリは、『光の都』(the City of Light)として知られているが、この称号は、新しい意味にとって代わられている。光の都は、今まで以上に、人間社会の向上を照らす世界の希望の光となっている。私たちが求め続けている世界全体の温暖化に関する国際合意がその光の一部となることは間違いない」と述べました。各国政府代表に対し、「ここ数週間、世界はパリを見守ってきた。今、世界中の人々は、文字通り、あなた方を見守っている。あなた方は、このCOP21で、2020年以降の温暖化対処のための国際枠組みへの合意に至るチャンスと責任を持っている。その枠組みは、各国の今後の温暖化対策について掲げた目標(約束草案)の達成を可能にし、途上国に対して必要な支援を届け、すべての国による温暖化対策を促進するものにすることが必要である」と述べました。

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写真4:開会スピーチを行うフィゲレス気候変動枠組条約事務局長

 COP21開会会合には、チャールズ皇太子(英国)も出席し、スピーチを行いました。チャールズ皇太子は、「人類の歴史の中で、世界中の多くの人々が、これだけの少数の人々に自らの運命を委ねたことはないのではないか。この会議でのあなた方の成果は、現世代の人々の運命だけではなく、まだ生まれていない世代の運命をも決める」とし、「私もそうするように、ぜひ、あなた方には、自分の孫のこと、そして、数十億人の声なき人々のことを考えてもらいたい。そして、最も若い世代のニーズを考えて欲しい。なぜなら、私たちの現在の利益のために、彼らが将来を諦めるのは当然だと考える権利は誰にも認められていないからである」と述べました。さらに、「各国が国益を追求するときに、国際社会の必要性を見失わないよう祈る」として、スピーチを締めくくりました。

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写真5:開会スピーチを行うチャールズ皇太子

 例年であれば、ここで、各交渉グループが今回の会議にどのような成果を期待しているかについての発言をしていくのですが、今回は、直ちに、首脳級会合の開会セレモニーに移りました。

 今回の首脳級会合は、150か国以上から首脳が集まっており、国際連合本部以外で開催されるものとしては過去最大だそうです。例年、首脳級会合や閣僚級会合は、COPの終盤に開催されますが、今回は、事務レベルの交渉をより確実に進展させるため、世界に対して政治意思を示すことが重要、ということで、会議の序盤に設定されています。

 首脳級会合の開会セレモニーにおいて、オランド大統領(フランス)は、パリでのテロ事件に対して、各国が示した友情と支援に感謝の意を表しました。そして、①産業革命以降の平均気温上昇を2℃未満、可能であれば1.5℃未満にどのように抑えていくかについて合意すること、②自らの温暖化対策目標(約束草案)の達成を諦める国がひとつも出ないように、国際社会で連帯して、温暖化問題に対応すること、③すべての社会やセクターが温暖化対策に取り組むように促すこと、の3つに合意できれば、COP21は成功といえるだろうと述べました。

 潘基文国連事務総長は、パリに集った首脳たちには、現世代と将来世代の人々に対して、リーダーシップを示す道徳上の責任と政治的責任があると述べました。また、パリ合意は、以下の条件を満たすものであることが必要であるとしました。継続すること;動的なものであること;資源と発展段階に応じて、先進国の主導する役割と拡大する途上国の役割とのバランスを維持するものであること;現在の各国の温暖化対策の目標を最低限として、信頼性の高いものであること。

 ファビウスCOP 21/CMP 11議長は、COP21の成功の条件は3つあると述べました。第1は、各国首脳の力を結集すること、第2は、政府以外のアクターの温暖化対策への参加を集めること、第3は、公平で、継続性があり、動的で、バランスがとれていて、法的拘束力があり、2℃目標の達成を実現できる、包括的かつ野心的な合意に達すること。

 首脳級会合の開会セレモニーの後、各国首脳は記念写真を撮りました。その後、2つの部屋に分かれて、首脳級会合が行われました。

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写真6:各国首脳の記念写真撮影の様子。この撮影の会場に行けるのは、セキュリティーの都合上、各国首脳+護衛官1名のみでした。撮影の間、会場内スクリーンにその様子が映し出されていました。

 オバマ大統領(米国)は、「200近くの国の代表がここパリに集っている。増大する温暖化の脅威は、他の何よりも、今世紀を劇的に特徴づけるものとなっている。私たちに残された希望は、今が転換点であり、ついに私たちは地球を守る決断をする瞬間であるということである。私たちは、温暖化問題に対する危機感を共有しており、そのために何事かを成し遂げなければならないことを認識してきている。いかなる国家も—国の大小や貧富にかかわらず—温暖化影響から逃れることはできない」と述べました。そして、「私たちは、温暖化によって壊滅的な影響を受けてしまう将来を変える力を持っている。ここしかない。今しかない。今、私たちが立ち上がれば、将来を変えることができる。州知事のひとりはこう言った、『私たちは、温暖化の影響を実感する最初の世代であり、対策をとれる最後の世代である』と」と述べ、「米国は、世界最大の経済大国として、そして、世界第二位の温室効果ガス排出国として、温暖化問題を作り出したことをただ認識するだけではなく、責任を果たしていくつもりである」と述べました。そして、パリ合意については、後退することなく、高い温暖化対策の目標を掲げることを可能にし、必要な国への支援を確実にする、継続性のある枠組みを設置することを求めました。最後に、各国首脳に対して、「温暖化問題の克服に向けて努力すると決意しても、劇的な勝利の瞬間という見返りが得られるわけではない。私たちの進歩は、違うかたちで評価されることになる。私たちは、ここパリで私たちが成し遂げたことがすべて実現するのを見届けるまで生きることはできない。しかし、私たちのパリ合意によって、次の世代が安心して暮らすことができるという認識が生まれる。それはより価値のある見返りと言えるのではないか。この認識を私たちの子供や孫に受け継ぐことによって、彼らは私たちがここパリで成し遂げたことを振り返り、私たちの成果を誇りに思うだろう。これを、ここパリでの共通の目的にしよう。世界を子供たちにとって価値あるものにしよう。世界を、紛争ではなく協力で、人類の苦しみではなく進歩で彩られるものにしよう。世界を、私たちが受け継いだものより、より安全で、より繁栄し、より安定し、より自由なものにしよう。さあ、頑張ろう!」と呼びかけました。

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写真7:首脳級会合で演説するオバマ大統領

 習近平国家主席(中国)は、パリ合意は、気候変動枠組条約上の原則に従い、同条約の完全実施に焦点を当て、合意を法的拘束力のあるものとし、各国の産業構造や能力の違いを尊重し、そして、途上国が生活水準を改善し、経済的に発展する正統なニーズを否定しないものにすることが重要であると述べました。

 安倍首相は、現在、各国が表明している2020年以降の温暖化対策の目標(約束草案)だけでは2℃目標の達成は困難であることから、「パリ合意には、長期目標の設定や、削減目標の見直しに関する共通プロセスの創設を盛り込みたい」と述べました。日本の温暖化に関する国際的な貢献として、途上国支援と革新的な技術の開発の強化を挙げました。最後に、「私たち世界の首脳は、パリで起きたテロに屈することなく、ここに集まりました。今こそ新たな枠組みへの合意を成し遂げ、国際社会の連帯を示そうではありませんか。」と各国首脳に呼びかけました。

写真8

写真8:会議参加者に配られたCOP21グッズのマイボトル。会議場には、給水所もあります。

 今日から2週間、ここパリでは、2020年以降の温暖化対策の国際枠組みについての合意を目指して、交渉が行われます。会場の雰囲気はどのようなものなのか、交渉はどれくらい進んでいるのか、なぜある論点が問題となっているのかなどを、現地から皆さんにお伝えしていきます。

参考資料:

文・写真(写真2を除く):
久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載