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2016年2月8日

第2弾:アジアにおける「低炭素社会の構築」と「廃棄物管理」

NIES国際フォーラムレポート

フォーラムの前日、AITのキャンパス内で発見した大きなトカゲ。1mはあったのではないでしょうか。ゆうゆうと水路を泳いでいました。小さいのも含めて2回遭遇しました。

会議自体は1月28日(木)をもって終了しましたが、前回の記事での約束通り、会議の内容について、今回を含め全3回で解説していきたいと思います。
前回の記事でも紹介したように、今回のフォーラムでは、4つのテーマに焦点をあてて、講演や議論が行われました。今回は、各テーマのセッションの様子を簡単に紹介します。

まずは、「低炭素社会の構築」と「廃棄物管理」についてです。

低炭素社会の構築について

キーノートスピーカー: Rizaldi Boer教授 ボゴール農科大学(インドネシア)

講演者紹介

  • 藤田 壮 氏 国立環境研究所 社会環境システム研究センター センター長
  • 福士 謙介 氏 東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 教授
  • Mara Mendez 氏 AIT, Resource Centre for Asia and the Pacific, Senior Programme Specialist(アジア工科大学院 アジア太平洋資源センター 主任プログラム担当(仮訳))
  • Chayatorn Thanawattanadamrong 氏 Thailand Greenhouse Gas Management Organization, Capacity Building and Outreach Office, Technical officer(タイ温室効果ガス管理機構 キャパシティビルディング及びアウトリーチ事務局 技術官(仮訳))

内容の簡単なまとめ

低炭素社会の構築は急務でありながら、発展途上国にとっては、経済発展と温室効果ガス削減のバランスをとることが難しい状況にあります。それぞれの地域の特性に見合った行動計画が必要とされますが、計画を練るためのデータの取得(モニタリング)や検証が不足している状況です。今後は、十分なデータを得たうえで、地域レベルの行動計画を練り、それらを国レベル、国際レベルの政策がめざすものに合致させていくこと、そして、先進国からの技術移転の促進などが期待されます。印象的だったのは、福士教授が東京大学の小宮山総長のお言葉から引用された、「成長は彼らの権利であるが、効率は義務である。」(”Growth is their right, but efficiency is their duty.”)の一言でした。

廃棄物管理について

キーノートスピーカー:C. Visvanathan教授 AIT, School of Environment, Resources and Development

講演者紹介

  • 石垣 智基 氏 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 主任研究員
  • Joao Aleluia 氏 United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific(UNESCAP), Environment and Development Division, Project Coordinator, (国連アジア太平洋経済社会委員会 環境開発部門 プロジェクトコーディネーター(仮訳))
  • Niu Dongjie 氏 Tongji Univeristy, College of Environmental Science and Engineering, Associate Professor(同済大学(中国・上海) 環境科学工学科 准教授(仮訳))
  • Thawal Saengsawang 氏 Director, TES-AMM (Thailand) Co. Ltd. (TES-AMMタイ株式会社 ディレクター(仮訳))

内容の簡単なまとめ

廃棄物管理もまた、世界最大の人口を有するアジアにおいては、注目される問題です。こちらもやはり、つまるところ地域に特化した問題であり、技術を持っている国々とは状況が異なることが問題点としてあげられました。また一般市民の意識と、政策上の動きが乖離していることや、廃棄物管理のためのデータ不足、管理コストが高いことなども指摘されました。それらを解決するために、各地域の状況に適した研究活動や情報共有を行うことが不可欠であり、また、廃棄物管理のための経済的なインセンティブが与えられる必要もあります。同時に一般市民の意識啓発も重要な課題です。

フォーラム参加者の声

今回のフォーラムの参加者の何名かにインタビューを実施しました。フォーラムについての感想を求めると、以下のような答えが返ってきました。

“今回得た知見を、是非自分の地域で応用したい。”(インド出身の参加者)
“テーマが興味深いものばかり。自分の地域の問題を考えるのに参考になる。”(カンボジア、スリランカ、タイ出身の参加者達)


各テーマに対する関心が高いようでした。参加者それぞれの専門分野で今回のフォーラムで得られた知見が役立てられることを願います。

続いての2つのテーマについても、活発な意見交換が行われました。その様子はまた次号でお伝えします。

つづく・・・
(文責:杦本友里・藤井実 (社会環境システム研究センター))
(写真:杦本友里)