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2005年8月10日

処分後に土に還るのか?

ゴミ(3)

 家庭生活や事業所、工場などから出たごみは、資源を回収したり、焼却して量を減らしたり、有害なものを無害化する処理を行った後で、最後は陸地や海に設けられた最終処分場に埋め立てられます。
 2002年度に発足した一般廃棄物(家庭や小規模な事業所などからのごみ)5,161万トン、産業廃棄物(工場や建設現場などからのごみ)3億9,300万トンのうち、それぞれ903万トン、4,000万トンが最終処分されました。
 ごみを埋め立てた後、ごみに含まれていたものや、ごみが分解したものが、染みこんだ雨水に溶け込んで汚水(浸出水)が発生します。汚い浸出水が発生するようなごみを埋め立てる処分場では、浸出水が周りへ漏れるのを防ぐ構造になっており、浸出水は集めて浄化された後に、河川などに放流されます。
 また念のため、周辺の地下水を定期的に検査して、浸出水が漏れていないことを確認しています。このような最終処分場の維持管理は、ごみを埋め終わった後も、浸出水がきれいになるまで続けられます。
 さて、浸出水はいつきれいになるのでしょうか。最後にごみは土に還るのでしょうか。これは、私たちがいつまで待てば安心できるのかということだけではなく、ごみを処理・処分するためにどれくらいお金がかかるのかという問題にもつながっています。
 埋め立てたごみが時間をかけて環境に影響を与えなくなっていく過程を、研究者は「安定化」と呼んでいます。安定化が終わるまでどれくらい時間がかかるのか、その間にどの物質がどれくらい発生するのか、最後にごみは何に変わるのか、安定化を早く進めるにはどうしたらよいのか、などさまざまな研究が世界中で行われています。
 埋め立ては世界中どこにでもあるごみの処分方法ですが、安定化が生物学や化学や物理学がかかわる複雑な現象であること、数十年から数百年かかる現象であるため実験しにくいこと、また、ごみの種類や処分場の作り方、さらに処分場がさらされる気候は、国ごとに、あるいは国内でも千差万別なので、世界で共通する理論を作りにくい分野です。
 ごみは土に還るのか、に正直なところまだ答えはありません。国立環境研究所では、世界的に共通であるごみの処分方法に関する課題を一つ一つ解き明かし、日本のみならず世界の処分場が安心できる施設となるよう、日夜研究を行っています。

ごみ処分場

【循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 最終処分技術研究開発室 主任研究員 山田正人】

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