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2005年9月21日

20年で進んだ破壊

オゾン層(2)

 オゾンは、太陽紫外線が強い熱帯・亜熱帯地域の成層圏で、酸素が光分解することによりどんどん作られています。と同時に、オゾンは大気中のさまざまな化学反応により、どんどん破壊されています。
 現在の地球大気中のオゾン量は、このどんどん作られ破壊される両方の過程が釣り合ったところで決まっています。オゾンの原料である酸素は、オゾン量の約40~50万倍大気中に存在しますので、酸素と太陽がある限り、地球大気中でのオゾンの生成はなくなりません。 従って、オゾンが破壊される過程が今後どのように変化していくかを注意深く見守ることが、将来のオゾン層を予測する上での重要なポイントとなります。
 フロンガスやハロンガスから放出される塩素原子や臭素原子がオゾン破壊を加速し、地球大気のオゾン濃度を薄くすることは、すでにご存知のことと思います。
 このオゾン破壊の化学反応が地球温暖化(成層圏では寒冷化となる)によってどのような影響を受けるか、また地球温暖化によって気候が変化し、オゾンの赤道から南極や北極への運ばれ方が変化するならば、それがオゾンホールにどのような影響を及ぼすのか、 そして、温暖化によってオゾン層が回復する時期は遅れるのか、といった研究が盛んに進められています。
 私たちの研究室でもこのような問いに答えるため、化学気候モデルと呼ばれるオゾン層の将来予測計算のできる数値モデルを開発して、研究を進めています。 1975年頃の地球大気の状態から出発して、2050年くらいまでのオゾン層変動の連続計算を、国立環境研究所のスーパーコンピュータを使って行っています。
 まだテスト段階ですが、図にオゾンホールが顕著になる前の1980年頃(左)と、顕著になった後の2000年頃(右)の南半球の10月のオゾン量の計算値を示します。
 1980年頃は南極周辺ではオゾン全量が220ドブソンユニット以上あったのに、2000年頃になると220ドブソンユニット以下(影をつけた部分)の面積が南極大陸の2倍近くまでに達していることがわかります。 この20年間にフロンガスやハロンガスの放出量の増加によって成層圏の塩素量と臭素量が増加し、オゾン破壊が進んだことが、確認されました。

南半球の10月のオゾン量の計算値
南半球の10月のオゾン量の計算値;1980年頃(左)と2000年頃(右)

【成層圏オゾン層変動研究プロジェクト オゾン層モデリング研究チーム 主任研究員 秋吉英治】

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