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2012年7月31日

干潟の生き物のはたらきを探る
- 浅海域の環境変動が生物に及ぼす影響

環境儀 NO.45

中村泰男/金谷弦
干潟には、多くの二枚貝やゴカイなどの底生生物が暮らしています。干潟での野外調査や飼育実験を通じて、彼らが河口域・沿岸域の生態系で果たしている役割を解明します。

 干潟は、陸域から流れてきた有機物や栄養塩が集まる場所で、アサリのような二枚貝、釣りの餌としておなじみのゴカイ類、カニやヨコエビなどの甲殻類といった底生生物が暮らしています。また、干潟は魚や鳥の餌場として、微生物による有機物分解や水質浄化の場としても非常に重要です。

 かつて、東京湾や伊勢湾、瀬戸内海沿岸をはじめとする内湾域には、広大な干潟が発達していました。しかし、20世紀後半までに、埋め立てや護岸工事によって多くの干潟や浅場が失われてしまいました。それでも、日本各地には、減少したとはいえまだ多くの干潟が残されています。干潟があることで、沿岸域の環境や生物相、さらに人間生活にとって、どのような「良いこと」があるのでしょうか。

 私達は、東京湾や仙台湾の干潟を主なフィールドとして、内湾域の環境変動と生き物の関係を明らかにしようと研究を進めてきました。今回は、沿岸域の干潟に注目し、その特徴とそこに生きる生き物の暮らしぶりや生態系内での物質の流れについて、最新の研究成果を交えながら紹介します。