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2020年9月29日

住民のごみ投棄行動

コラム2

 バンコクの水路になぜ生活ごみが落ちているのか。はじめに考えた理由は、周辺住民による意図的なごみ投棄、つまりポイ捨てでした。そこで、生活ごみがたくさん落ちている水路沿いの住民に、普段どこにごみを捨てているかを選択式で尋ねました。その結果、公的に設置されているごみ収集ボックスの割合が高く、水路に投棄していると答えた人は多くありませんでした。この調査には、社会的望ましさのバイアスが生じることが知られており、回答者は社会的に望ましいとされる選択肢を選ぶ傾向があります。今回の調査では、ごみ収集ボックスにごみを出しに行く、という行為がそれにあたります。一方、水路へのごみ投棄は、一般的には社会的に望ましくない行為と考えられていますので、社会的に望ましい方向に答える傾向の強い人は、実際には水路にごみを投棄していたとしても、その選択肢を避けていることが疑われます。にもかかわらず、回答者の12%が「少しは」ごみは水路に投棄している、と答えた点は注目されます。

ごみが水路に入り込む多様なプロセスの図
図2 ごみが水路に入り込む多様なプロセス
ごみが水路に入るプロセスには、意図的に投棄するポイ捨てと、意図せず投棄される落下があります。

 では、なぜ水路にごみを投棄するのでしょうか。その理由としては、「ごみ収集ボックスが遠いから」、「周りがそうしているから」、「水路へのごみ投棄を悪いことと思っていないから」、などが想定されます。そこで、アンケート調査でこれらの想定を含めて個人の考えを調べ、実際の行為との関連性を統計的に解析したところ、「災害や環境劣化のリスク認知」「地域美化への積極性」「周囲の環境のきれいさ」の有無がごみ投棄の有力な要因と推察されました。この結果によれば、水路へのごみ投棄を減らすためには、ごみ投棄行動が水害の要因や公衆衛生の悪化につながることを周知させる活動、地域住民を巻き込んだ環境美化活動の実施などが、有効な手立てだと考えられます。

 水路のごみがどこから来るかについて、ごみのポイ捨て以外の原因を行政担当者や住民へのヒアリングと現地調査の結果から探ったところ、水路にわざと捨てているわけではないが、意図せず落ちているという説が有力視されました。具体的には、1.水上にせり出して建っている住宅からの落下、2.自治体が設置している川沿いの集積所に残されたごみの落下、3.住民が自己判断で川沿いに作った「個人用収集ポイント」からの落下、があると考えています。

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