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地球環境研究センターにおける地球環境研究総合推進費による総合化研究

プロジェクト研究の紹介

植弘 崇嗣

 地球環境研究センターにおいては地球環境研究総合推進費による総合化研究を実施している。この「総合化研究」という特殊な研究領域は、分野別に実施されている個々の研究プロジェクトと違い、次の3つの役割を持っている。
(1)地球環境研究は「課題別研究」により分野ごとに研究プロジェクトが推進されているが、これらの個々の分野にまたがる研究領域や共通する研究領域を体系的かつ集中的に解析する「分野横断的研究」。
(2)個々の研究プロジェクトの成果を総合的かつ体系的に集約して、政策の具体的な展開に資する知見を提供する「政策研究」。
(3)個々の研究領域の重要性を地球環境問題の解決という観点から総合的に評価する「リサーチ・オン・リサーチ」。

 これらの役割を担って、平成2年度及び3年度においては3つの研究に着手している。まず、総合的な世界モデルの開発をめざした「持続的発展のための世界モデルの開発に関する研究」(世界モデル研究)、環境と経済を統合する評価体系づくりをめざした「環境資源勘定体系の確立に関する予備的研究」(環境勘定研究)、さらに、地球環境問題に共通する社会経済システムの変革方向を探る「地球環境保全のための社会経済システムのあり方に関する国際比較研究」(社会システム研究)である。2番目の環境勘定研究はフィージビリティスタディの段階で、平成4年度から本格的なプロジェクトを実施する予定である。

 表には、これら3つの研究の役割が整理してある。

 まず、「世界モデル研究」は平成2年度から実施しているもので、個々の研究プロジェクトの成果を活用しながら地球環境の変化を総合的に予測する「環境総合モデル」と、この環境変化に影響を及ぼす経済活動を分析する「世界経済モデル」の2つを開発中である。環境総合モデルは、7つの指標群と8つのマトリクスによって構成されるモデルであり、個別の研究プロジェクトの成果を体系的に集約して地球環境問題を総合的な枠組みの中で評価することができる。また、世界経済モデルは、世界を36か国・地域に分割して、地球環境の制約のもとで、どの程度マクロ経済に影響が生じるかを分析することができる。昨年12月に開催された第2回地球環境研究者交流会議の特別シンポジウムにおいて、この成果が報告されたが、わが国で開発中の他の経済モデルを含めて、来年度よりモデルの比較研究に着手する予定である。

 一方、環境勘定研究は環境資源や環境汚染物質のフローとストックに着目して、個々の地球環境問題を横断的に解析することを目的としている。この解析によって、自然の劣化や環境の汚染の収支決算を毎年集計し、それを経済的価値に換算することによって、従来の国民経済計算体系に環境の大切さを反映することもできる。来年度から本格的な研究を開始して、GNPに代わる新しいマクロ経済指標を作成するとともに、このような指標を用いて個々の地球環境問題解決の意義を評価する予定にしている。

 また、平成3年度から開始した社会システム研究においては、各種の地球環境問題の原因になっている社会経済活動をより体系的に解明するため、これらの活動の基礎となる社会経済システムの基本構造を国際比較により分析するものである。今年度は、都市構造、産業構造、ライフスタイルの3つを取り上げて国際比較に着手し、これらの構造の差が地球環境への負荷にどのような影響を及ぼしているかを分析しており、地球環境にやさしい社会経済システムのあり方を見出したいと考えている。


(うえひろ たかし、地球環境研究センター研究管理官)

表  現行の総合化研究一覧