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「環境ブーム」ののちに

巻頭言

主任研究企画官 久野 武

 去年辺りから「環境ブーム」が日本を席卷した。それは今年6月のUNCEDで頂点に達した感がある。環境問題が新聞紙上を賑わせなかった日はないといっていい。環境基本法の制定、環境庁の省昇格や環境税の導入が声高に取り沙汰されたし、各省の新規施策や構想も明らかに<環境>にシフトした。

 昭和40年代の半ばにもそういう時期があったことを思い出す。少し前まで夢物語だと思っていた環境庁や当研究所の前身である国公研があれよあれよという間にできてしまった。

 そのブームは引き続くオイルショックでたちまちにして色あせてしまったが、そのブームがいまの世界に冠たる公害規制システムと環境行政の基礎を築いたことは間違いない。

 今度の「環境ブーム」というのはひとつは地球環境問題であり、いまひとつは都市生活型公害の問題である。

 わが研究所は平成2年に大規模な改組を行ったのであるが、それはまさに現在の「環境ブーム」を予見し先取りしたかのような、これらの問題に正面から答えようとした組織改革であったし、まことに時宜を得たものであったといえる。

 しかし今回の「環境ブーム」も、また、もうひとつの力強い援軍と思われた科学技術会議や自民党科学技術特別委員会などの科学技術研究重視への動きも、不景気・税収不足・景気浮揚策が云々されだすと、総定員法、予算シーリングの高い壁のまえで失速した感がしないでもない。

 こうした外の動きに鋭敏に反応し、環境研究の前進のために利用できるものはどん欲に利用していくということも大事であるが、一方では外の動きに一喜一憂、右顧左眄することなく、長期的な視野と現実的な展望でもって環境研究の進むべき道を模索するという複眼的な思考が必要と思う。研究所では改組2年を経て、いくつかみえてきた問題点を明確にし、改組の理念の具現化に資するべく研究計画策定小委員会を設置し検討をすすめてきているところであり、各界各層の意見を反映させたいと思っているところであるので、積極的に意見を寄せられることを期待する次第である。

(ひさの たけし)