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「晴れときどき曇り、ところにより、にわか雨」

海外からのたより

西川 雅高

 「ラブリー!」、「ミゼラブル!」。ここ英国の中央部に位置するシェフィールドでは、天候について、日に何度となくこれらの単語を口にすることが多い。人口50万人余り、イングランドで4番目に大きいシェフィールド市は、周囲が小高い丘に囲まれているせいか、英国でも天候の急変する地域の一つとして知られている。雨宿りと理屈をつけて、どんな通りでも簡単に見つかるパブでちょっとひと休み。とにかく、ビターもラガーもそのうまいのと種類の多いことにただただ脱帽です。

 私の所属したシェフィールドハラム大学科学部化学教室は、市の中心部に建物があり、典型的な英国の大気汚染をモニタリングするのに格好の場所であった。C.W.McLeod博士の下で大気エアロゾルのモニタリングを行った結果、大気中の鉛濃度が日本に比べ10倍ほど高いという興味ある結果が得られた。そこで、その鉛は、どこから発生したのかを調べることをテーマとして取り組むことにした。鉛には、4種類の安定同位体が存在し、採掘場所によってその同位体比が異なることが知られている。英国は、かって大英帝国として関係の深かった国々から鉛を輸入し、いろいろな工業材料に使用している。自動車に使用する有鉛ガソリンもその一つである。大気中の鉛の安定同位対比を調べた結果、有鉛ガソリン中の鉛の安定同位体比と一致し、さらにそれらは、カナダ・ケベック州産の鉛とピタリと一致することを明らかにした。

 通り雨をやり過ごすために飛び込んだパブで、鉛の経路と英国の変遷を重ねながらウマいビールを一杯。そして、飲み干した頃に見えてくるであろう「ラブリー」な青空を期待しつつ英国にも乾杯。

(にしかわ まさたか、化学環境部計測管理研究室)

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