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研究のネットワーク化

巻頭言

全国公害研協議会会長 東京都環境科学研究所長 土屋 隆夫

つちや  たかお の写真

 全国公害研協議会が発足したのは昭和46年であるから,会員の各研究所の多くも20年前後の歴史を持ったことになる。

 20年前を振り返ると,汚染の実態調査の他,各種の公害対策が研究の中心課題で,大気汚染についてみると,光化学スモッグの発生機構に関する研究や,固定発生源の排出ガスの処理技術の研究等が行われていた。また,水質汚濁に関しても,各発生源の特性に応じた個別の排水処理技術の開発や、生産工程のクローズドシステム化による排出汚濁負荷量の低減化技術の開発等が行われており,大気,水質ともに発生源対策が十分には確立されていない状況にあった。

 これらの問題については,その後,各現象別の専門技術者の努力により解決が図られ,地域的な公害防止に役立ったことは周知のとおりである。

 現在,私たちに要求されている課題は,地球環境を視野にいれた各種研究の他,従来から解決が望まれながら有効な対応策が確立されていない自動車排出ガス対策,都市における熱汚染対策,上水源河川の水質保全対策,閉鎖系水域の富栄養化対策等で,いずれも多分野にわたる検討を総合的に行う必要があり,地方研究所の努力では解決が困難な課題が残されている。

 今年の9月に発行された全国公害研会誌(通巻第48号)に,国立環境研究所の市川惇信所長は随想を寄稿され,その中で,「時代を変える学問技術は,具体的問題をブレークスルーで解決することから生まれる」と述べられ,国立環境研究所との共同研究を呼びかけておられる。

 研究は研究者の自発性に負うところが大きいとはいえ,総合的な検討を要する研究には,多分野の人々の協調が必要である。そのためには,個々の専門分野の研究者がよく理解したうえで,安心して参画できるような研究のネットワーク化を進めることが大切であると思う。

(つちや たかお)