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太田 庸起子

 昨年6月のブラジルで開催された国連の環境開発会議(UNCED)には世界172カ国の政府代表が集まったが,一方,1420団体のNGO(非政府機関、民間公益団体)も参加し,女性団体を含め,多くの女性が関心を寄せていたという。この会議で採択されたアジェンダ21(持続的発展のための行動計画)の第8章では次のような点が指摘されている。「・・・環境に優しく経済的効率も高く社会的に公正な持続的発展を達成するための総合的な方針や政策決定のためには,中央,地方政府,企業や労働組合,科学技術専門家グループ,環境保護団体,一般市民等が参加して効果的な話し合いを行う事が大変重要である。・・・」。ここで,科学技術専門家グループと述べているが,女性の役割の課題の一つに「各国は学術研究機関および地方の女性研究者と共同で次のような女性の役割に着目したデータベース,情報システム,参加型の調査,政策分析を推進するとして,7項目について提案している。例えば,(1)天然資源の管理保全に関する女性の知識と経験,(2)・・・砂漠化,有害化学物質等の環境破壊が女性に与える影響,(3)環境上健全な技術を女性に普及するための都市および田舎における訓練,調査センターを設立するプログラム等である。このように女性が多様な役割を演じながら上記のような活動をし,持続的発展のための政策決定機関にもっと積極的に参加し,指導的役割を果たして行くことが必要だとされている。そのためには特に科学の面において女性の専門家をふやす事であるが,学際的アプローチを必要とする環境分野においても女性の科学者,技術者が少ないのが現状である。

 わが国における専門的,技術的職業分野への女性進出をみると,科学研究者は11.5%であった(平成4年版国民生活白書)。また,関係学科別女子の大学入学者数の構成比は理学2.4%,工学4.2%,農学3.1%,保健6.4%,社会科学24.8%,人文科学33.7%,家政5.7%,教育 11.6%・・・となっている(平成5年版労働白書)。この中で環境分野に興味をもっている人は何%であろうか。一般論になるが女性の特性を活かしたタイプの研究もあるので,そのような研究を志すことも肝心であると考える。

 国立の機関および地方自治体関連等の環境研究機関には学会等で立派に活躍している女性研究者がいる。リオ宣言は,第一原則として「持続的発展への配慮の中心は人間である。すべての人間は自然との調和の中で健康で生産的な生活を営む権利を有する」と明記している。健康影響研究の分野で仕事をしてきた者にとっては、有害物質と健康との問題は古くは産業労働の場から起こり,公害問題となった時代を経て今日の地球温暖化やオゾン層破壊といった地球レベルの環境問題および都市生活者型環境汚染の問題へとなってきた推移がよくわかる。地球環境問題が世界の最重要課題となった今日でも,局地的汚染は依然として残っている。公害型環境研究は使命感にもえてなされてきた。今日の地球環境問題では新しくとりあげられた物質に対処する緊急性が必要になっているが,一方,国立の機関だから可能という時間をかけた研究もある筈である。環境と持続的開発における研究は,環境科学技術として成長する夢と可能性を秘めている。夢と可能性に対する展開は若者を引きつけることにもなるであろう。夢のない学問では発展性がないからである。女性の役割が重要視されている今日,ここに環境研究の分野への女性参加を求めたが,単なる年の功による戯言ではないと思っている。

(おおた ゆきこ,環境健康部上席研究官)