新刊・近刊紹介
国立環境研究所研究報告(R-132-'94)
「自由記述法による生活環境に関する地域住民の意識の調査と分析」(平成6年3月発行)
自由記述法というのは,アンケート調査において回答者に意見あるいは連想を自由な形式で書いてもらう方法である。この方法は,調査者が問題について持っている認識枠に制約されない回答が得られることと,調査者の設問の意図を回答者に読み取られることがないことが大きな特徴であるである。当然ながら,回答結果の解析にはそれなりの仕掛を要する。まず,回答中の文や句を単語に分解して,もともと単語で回答されたものと合わせて,単語の出現する頻度を調べる。また,クラスター分析という方法で得られた単語をグループに分けて,語のグループの意味付けをする。さらに,この報告に含まれる公害苦情の調査のように回答がしばしば長文になって,内容としても複雑な構造をもつものについては,回答文そのものの意味と構造を読み取って分析することも行う。調査対象は,東京で行った都市生活型公害に対する意識と,当所にほど近い霞ヶ浦の湖岸の人々の湖についての意識である。
国立環境研究所研究報告(R-133-'94)
「水環境における農薬流出に関する研究報告」(平成6年3月発行)
本報告書は,水田・畑地・ゴルフ場から水環境中に排出される農薬の流出特性に関する調査研究の成果を取りまとめたものである。本研究は,国立環境研究所と,北海道・神奈川県・長野県・石川県・福岡県の各公害研究機関との共同研究として実施されている。ゴルフ場・畑地・水田から河川へと排出された農薬の濃度だけでなく,負荷量としても捉えて,農薬流出のモニタリング手法の確立や,農薬流出量の定量評価を行うとともに,農薬流出モデルへの展開を目的として実施されている。農薬は,水管理の不十分さ等によって晴天時にも排出されるが,面源負荷からの排出のために降雨時流出負荷量が大きい特徴がある。このために降雨時調査を実施して,高流量時に高濃度で,したがって,高負荷量で流出する実態が明らかにされた。農薬の流出率と水溶解度との関係等についての検討結果も報告されている。内容は,ゴルフ場からの流出の研究が3編,畑地からの流出の研究が1編,水田からの流出の研究が4編で構成されている。
目次
- 新しい課題(地球環境変化)に対応するために巻頭言
- 退任に際して − 基礎研究のすすめ −
- 研究生活を振り返って
- 環境負荷の構造変化から見た都市の水質問題の把握とその対応策に関する研究プロジェクト研究の紹介
- 微小試料中の元素の存在量および同位体比の精密測定法の開発と応用省際基礎研究の紹介
- "Thermal decomposition of tetrachloroethylene" Akio Yasuhara Chemosphere, 26, 1507-1512 (1993)論文紹介
- "Dynamics and energy balance of the Hadleycirculation and the tropical precipitation zones: Significance of the distribution of evaporation." Atusi Numaguti:Journal Atmospheric Science, 50, 1874-1887.(1993)論文紹介
- 森林の小さな生物の消長 − 倒木上の植生遷移 −研究ノート
- 河床付着生物膜による栄養塩の一時貯留・変換機能研究ノート
- 国際環境協力への期待 −タイ環境研究研修センターにおける経験−ネットワーク
- 編集後記