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米国最小の州より

海外からのたより

佐野 友春

筆者の写真

 私は,本年3月末より博士研究員として米国ロードアイランド州のロードアイランド大学に滞在しています。ロードアイランド州は米国で最も面積が小さい州(3100km2)で,マサチューセッツ州とコネチカット州との間にあります。昔の大富豪が避暑地として豪華な別荘を建てたニューポートの街は,黒船で有名なペリーの出身地でもあるそうで,黒船祭り(Black Ship Festival)というお祭りが今年も7月に催され,盆栽や着物・和太鼓などの日本的なアトラクションが行われていました。また,ロードアイランド州は海岸線が長くて(640km)ビーチが数多く存在し,夏季には他州からも多くの人々が休暇を過ごしに来ています。大学があるキングストンの町は,治安も良くとても住みやすいところです。林の中に民家や農場が点在し,のどかなところでリスや鹿には驚きませんが,最近コヨーテに子供が襲われたというニュースが流れて少し驚きました。また,隣町の海岸にはベイキャンパスがあり,その横には米国環境保護庁(EPA)や米国海洋大気庁(NOAA)の研究所もあります。大学は1892年に創立され,広々としたキャンパス内に石造りの洒落た建物が点在しています。写真は私が所属している薬学部の隣にある,石造りの建物です。

 私が所属しているのは薬学部の生物医学科で,Shimizu教授のもとで研究をしております。Shimizu教授は,麻痺性貝毒であるサキシトキシンや,渦鞭毛藻(赤潮)の有毒物質であるブレベトキシンの構造決定を行ったことで知られており,海洋天然物化学の第一人者です。研究室は教授1人,博士研究員4人,大学院生4人と小規模ですが,生理活性物質の生合成や新規生理活性物質の単離・構造決定などを精力的に行っております。私もこちらでは渦鞭毛藻が生産する有毒物質の代謝や生合成に関する研究を行っておりますが,渦鞭毛藻はデリケートなうえに増殖が遅く,しかもあまり高密度にはならないので大量に培養するのに苦労しています。また,環境研では日常的に測定していた核磁気共鳴装置(NMR)を使用するのにも研究費(1時間25ドル!)が必要だったり,分子量を測定するための質量分析装置がなかったりで,環境研は分析装置に恵まれていることをあらためて思い知らされました。

 こちらに来た当初は,郵便のトラブルにより社会保障番号を入手するのに2ヵ月近くかかったり,銀行口座や小切手の名前や住所に入力ミスが重なったり,免税のはずの滞在費から税金が引かれていたりで気苦労が絶えませんでしたが,最近になってようやく落ち着いてきました。これから帰国するまでの間,できるだけ多くの米国的な良いものを吸収していきたいと思っています。

(さの ともはる,化学環境部化学毒性研究室)