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ブリティッシュ・コロンビア大学より

海外からのたより

久保 明弘

 科技庁の中期在外研究員として,カナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)に5月に来てから4カ月になろうとしています。UBCは,学生数約3万5千のカナダで2番目の規模を持つ1915年創立の州立総合大学で,1993年には生化学の教授Michael Smithがノーベル賞を受賞しています。UBCは,バンクーバーの西端にあり,市街地からは広大な公園の森で隔てられています。その広い構内には,UBC人類博物館,新渡戸記念庭園,UBCボタニカルガーデンなどの観光スポットもあります。

時計台と図書館の写真
写真 UBCの時計台と図書館

 私は,家族と一緒に,構内にある2LDKのUBCのアパートに入居することができました。UBCのアパートは,民間のアパートより家賃が安いので人気があります。ここでは居住者に対して,小冊子やニュースレターで生活に必要な情報が提供されており,また,集会所では様々な催物やサークルが開催されていて,世界各国から来ている人々がここでの生活になじめるようにとの心遣いを感じました。

 私が所属しているのは,農学部(AgriculturalSciences)のBrian Ellis教授の研究室で,伝統を感じさせる(古い)建物の中にあります。この研究室では,私が従事しているオゾンの植物への作用機構に関する研究のほか,植物の二次代謝,組織培養について研究が行われています。UBCから給料が出るパーマネントポストは教授一人で,その下に4名の研究者と1名のテクニシャンと11名の学生(博士課程7,修士課程2,学部生2)がいます。Ellis先生は,学科長の立場にある教授ですが,10人の学生を直接指導しています。5月から9月の第1月曜日までの夏休みの期間中は,雑用は少ないようです。UBCは,全学的に世界各国から学生やスタッフを受け入れている大学ですが,この研究室にも様々な国の出身者がいます(カナダ7,日本・インド各3,アメリカ・バングラデシュ・ユーゴスラビア・アゼルバイジャン各1)。カナダの大学に来て移民する(カナダ国籍を取得する)人が結構います。カナダは移民の国なので,国際的に開かれているところがUBCの研究室の特徴だと言えるでしょう。

 UBCのインフラはよく整備されています。例えば,DNAの塩基配列決定という労力のいるルーチンワークを引き受けてくれる部署が学内にあります。また,文献検索は,手元のパソコンから無料で行うことができます。UBCの中央には豊富な資金があるようですが,各教授の資金力は,グラントをどれだけ取れるかにかかっています。こちらでは,奨学金の切れた学生に教授が生活費を支給することになっているため,グラントをあまり取れない教授は学生もあまり取れないそうです。Ellis研は,中規模の研究室ですが,実験機器や器具にはあまりお金をかけていません。そんな中で,学生たちは不足している物の取り合いをしながら,レベルの高い研究に取り組んでいます。

(くぼ あきひろ,生物圏環境部分子生物学研究室)