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日韓パートナーシップによる開発途上国の水環境修復に向けた国際協力支援

研究施設業務等の紹介

水落 元之

 日韓共同研修とは日本の国際協力機構(JICA)と韓国の国際協力事業団(KOICA)が共同でアジアの開発途上国を対象として実施している集団研修であり,現在,経済分野と水環境分野で実施されています。水環境分野は淡水環境修復コースとして実施されており,日韓双方で,研修内容を分担し,それぞれ2週間程度の研修を実施しています。研修の目的は水環境改善システムの理解と習得ですが,JICAとしては日韓のみならず二国間で共同して実施する初めての集団研修であり,非常にユニークなものと言えます。また,JICA側からも日韓両国の継続的なパートナーシップ強化を目指すものと高く評価されています。

 国立環境研究所は日本側研修実施機関として研修内容の企画,立案を担当し,実際の研修実施をJICAと協力して行っています。本研修は平成12年度から開始し,今年度で5回目を迎え,これまでにアジア地域から延べ76人の研修生を迎えています。国別年度別受入実績を以下に示しますが,受入は14ヵ国に上っています。

受け入れ実績の表
表 国別年度別受入実績

 水環境分野での共同研修実施には当該分野での韓国,特に国立環境研究院(NIER)との長期にわたる協力関係が背景にあります。NIERとはNIERの設立当初から人的交流を含む研究協力を行ってきました。特に1993年からは1999年までの6ヵ年にわたり,NIERをカウンターパートナーとして「韓国水質改善システム開発」プロジェクトをJICAのプロジェクト方式技術協力として実施しました。主として韓国における生活排水や畜産排水の分散型処理技術普及に対する協力を行いました。韓国のOECD加盟に伴って,本プロジェクトがJICAとして韓国への最後の支援となりました。折しもJICAでは,1998年10月,金大中韓国大統領(当時)の来日時に発表された「21世紀に向けた新たな日・韓パートナーシップのための行動計画」宣言を受け,開発途上国の社会的・経済的発展を支援する日本と韓国の共同研修の開催についてのフレームワークが協議されていました。その中で順調に成果が上がりつつあった「韓国水質改善システム開発」プロジェクトが注目され,プロジェクトで得られたノウハウを活用し,さらに波及効果を高めるために当該分野での共同研修の実施が決定されました。本研修は当初,NIERを韓国側研修実施機関として開始されましたが,2年置きに行われた日韓双方でのプログラム等の見直し,評価を経て,今年度からは韓国科学技術研究院(KIST)が実施機関となりました。

 平成16年度の研修は平成16年11月15日から14名の研修生を迎えて,最初に日本側から開始されました。11月30日に韓国へ移動し,韓国側の研修が12月10日まで行われました。日本側では主として「生活排水処理技術」,「浄水処理技術」,「生態工学的水環境修復技術」および「日本の水環境政策」に関する研修を行いました。韓国側では「産業排水処理技術」,「埋立地出水処理技術」,「親水空間再生技術」および「韓国の水環境政策」に関する研修を主として行いました。両国での研修内容があまり重複しないようにプログラムが組まれていますが,環境政策については両国の比較が可能なように双方で同じ内容の研修を組んでいます。研修は講義と関連施設見学の組み合わせで行われますが,研修生の理解度を高めるために,なるべく同一日に関連する講義と見学を行うような配慮も日韓双方で協議の上で図られています。

 日本側の研修内容については国立環境研究所が企画,立案を担当していますが,実際の講義等につきましては私どもだけではなく,国内の多くの専門家にお願いして実施しています。本年度は環境省担当者を含めて独立行政法人,大学,財団法人および民間企業から延べ20名以上の方が研修を支えてくれました。

 また,本研修は日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)で合意された「淡水汚染防止」プロジェクトの活動の一つとも位置付けられています。したがって,将来的には日中韓共同研修といったスキームへ展開できるようJICAへ働きかけを行っているところです。

 最後に今年度の研修の写真を示します。研修生の方たちと話していると国の事情はそれぞれあるにしろ,いかに水環境修復が共通した緊急な課題であることが良く理解できます。また,研修終了後に研修内容等に関してアンケートを実施していますが,特に講義の分かりやすさ,有用性に対して高い評価が寄せられています。これらの評価は研修を重ねるごとに高くなっているように感じられ,アンケート結果を基に研修内容を練り直してきた成果が現れたものと自負しています。

集合写真
前列左端で顎のラインに富栄養化が顕在化し始めているのが著者

 本研修はアジア地域での水環境修復を図る上で,池に投げ込んだ小石のようなものではありますが,最初は小さな波紋が次々と大きな波紋となるように,研修生を含む全ての研修参加者のネットワークが大きなうねりとなり,水環境修復へ繋がることを切に願っています。また,このような観点から,本研修のような業務の推進が研究所にとっても極めて重要であると考えています。

(みずおち もとゆき,循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)

執筆者プロフィール:

自分自身の富栄養化対策にあっさり失敗し,人としての欲望の果てしなさに嘆息しつつ,反省の日々を送っています。