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第2期中期目標期間を迎えて

巻頭言

理事長 大塚 柳太郎

  国立環境研究所は節目となる年を迎えました。2001年に独立行政法人となり,はじめて経験する5年間の第1期中期目標期間を終え,本年4月から第2期中期目標期間に移行したからです。

 第1期中期目標期間における本研究所の活動については,本誌でも紹介してまいりましたように,6つの重点特別研究プロジェクト,2つの政策対応型調査・研究と,各領域における基盤的研究・先導的研究,さらに,知的研究基盤の整備を並行して実施してきました。その成果は,研究力の向上をもたらすとともに,我が国の環境政策のみならず国際的な環境政策の策定にも大きく貢献してきました。昨年度に行われた,第1期中期目標期間の業務に対する総合科学技術会議などの評価でも,すべての分野で高い評価を得ることができました。

 研究活動をつづけながら,第2期中期目標期間における研究計画について,平成16年度から準備を開始いたしました。特に重点的に取り組むテーマの選定を巡る議論を精力的に積み重ね,昨年の早秋にその骨格を決定しました。その後,詳細を詰める作業を進める一方,環境省との意見交換や同独立行政法人評価委員会への説明などを行い,最終的な研究計画が作成されました。

 本期の研究計画は,4つの重点研究プログラムを設定したことに大きな特徴があります。その詳細は本号村川昌道企画部長の説明にゆずり,ここでは基本方針について述べたいと思います。

 国立環境研究所が,多様な環境問題のなかでも国民が解決を望む課題,あるいは地球規模で特に重要な課題に全力で取り組むのは当然でしょう。このことが,重点研究プログラムを設定した基本的な理由です。そして,第1期中期目標期間の重点特別研究プロジェクトなどでの経験を活かし,重点研究プログラムは5年よりも長い期間に及ぶことを想定しました。そのうえで,各重点研究プログラムに,5年間で終了する3~4の中核プロジェクトを設けることにいたしました。

 一方で,新たな研究方法の開発や,将来顕在化すると予測される問題に対処する先導的な研究が不可欠なことは言うまでもありません。新たな技術として注目されるナノテクノロジーの環境研究への応用,一方で危惧されるナノマテリアルが及ぼすかもしれない健康影響,さらには昨年来重大な社会問題化したアスベスト禍への対処などを考えれば,この理由は一目瞭然でしょう。基盤的・先導的な研究はまた,重点研究プログラムを直接あるいは間接に支える役割も果たすことになります。

 本年の3月から4月にかけて起きたもう1つの大きな変化は,多くの独立行政法人と同様に,本研究所の役職員の身分が非公務員になったことです。国立環境研究所という法人の自己責任が今まで以上に大きくなったわけで,すべての所員の相互信頼に基づきながら,持てる力を十分に発揮できる研究所にしたいと考えています。この点からも,国立環境研究所憲章が制定されたことは意義深いと考えています。なお,憲章の内容と作成経緯などについては次号で詳しく紹介いたします。

 最後に,研究成果や環境情報を国民の皆さんに知っていただく試みについてふれたいと思います。この5年間,ホームページの充実,春と夏の施設公開,東京と京都で行った公開シンポジウム,国立環境研究所友の会の催しへの協力など,さまざまな活動に積極的に取り組んでまいりました。私たちはこれらの活動をさらに充実させるよう努力いたしますので,皆様からは忌憚ないご意見をいただくとともに,ご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

(おおつか りゅうたろう)

執筆者プロフィール:

東京大学(医学系研究科)名誉教授,専門は人類生態学。 昨年3月まで,人類生態学のフィールドワークのためアジア・オセアニア諸国を飛び回っていました。環境研に移った昨年度は,北海道と沖縄,それにマレーシアとヴェトナムに研究者の方々と一緒に出張する機会があり,環境研究におけるフィールドワークの重要性を改めて感じています。