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「環境儀」No.23 地球規模の海洋汚染-観測と実態(平成19年1月発行)

 海洋汚染の実態を明らかにするモニタリングは,化学物質が環境中できわめて微量にしか存在しないこと,広大な外洋を調査する手段が無いことなどの理由で,沿岸域の調査に限られていました。国立環境研究所海洋研究チームでは,1991年から,フェリーや客船,タンカーなどの商船(篤志観測船)に化学物質濃縮捕集システムを搭載し,航路上を連続的に観測する体制を構築してきました。2000年から5年間実施された,国際航路を利用した地球規模の海洋汚染モニタリング調査では,代表的なPOPs(有機残留汚染物質)であるヘキサクロロシクロヘキサン(HCHs)が,観測したすべての海域で観測され,海洋汚染の広範さが明らかとなりました。特に北半球では濃度が高く,β-HCHは日本近海で,αおよびγ-HCHは北米沿岸域で高濃度になるなど,異性体によって特異的な濃度分布を示すこともわかりました。これらの発見は,化学物質の広域における動態解明のための基礎的資料となるでしょう。環境儀23号は,このユニークかつ壮大な試みを,一研究者の歩みを踏まえ,一つの物語として語り伝えるものです。

(「環境儀」第23号ワーキンググループリーダー 田中 嘉成)