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 受賞者氏名:大原利眞
 受賞年月日:2009年9月16日
 賞の名称:社団法人大気環境学会論文賞 (社団法人大気環境学会)
 受賞対象:日本のSO42-沈着量における経年変動のモデル解析
(J.Jpn.Soc.Atmos.Environ., 43(3), 136-146, 2008)

 受賞者からひとこと:
 本論文は,東アジア域の化学輸送モデルと排出インベントリを用いて,1995年から2003年における,日本の硫酸イオン(SO42-)沈着量の経年変動を解析したものです。沈着量の経年変動を,三宅島噴煙による排出量,それ以外の排出量,気象のそれぞれの影響に分けて解析した結果,(1)三宅島噴煙は2001年には大きな影響を与えていたがその後減少していること,(2)中国の排出量が日本の沈着量に大きな影響を及ぼし,その影響が2000年以降増大している可能性が高いこと,(3)東アジアにおける気象の年々変動の影響も大きいことを明らかにしました。東アジアの硫酸イオン沈着量を長期間にわたってモデル解析した手法のオリジナリティ,及び,東アジアと日本の大気環境保全にとって貴重な情報を与えたことが評価されたものであり,中核プロジェクト「アジアの大気環境評価手法の開発」が評価されたものと考えています。


 受賞者氏名:大原利眞,黒川純一,清水 厚
 受賞年月日:2009年9月16日
 賞の名称:社団法人大気環境学会論文賞 (社団法人大気環境学会)
 賞対象:2007年5月8-9日に発生した広域的な光化学オゾン汚染:観測データ解析 (J.Jpn.Soc.Atmos.Environ., 43(4), 225-237, 2008)

 受賞者からひとこと:
 本論文は,2007年5月8-9日に発生した広域的な光化学オゾンの高濃度汚染について,全国の大気汚染常時測定局で測定された大気汚染濃度の時間値データを多様な視点から解析し,広域的なオゾン高濃度現象の実態を解明するとともに,越境汚染の影響が大きかったことを実測データに基づいて指摘したものです。同時投稿のオーバービュー論文(同時受賞)及びモデル解析論文とともに,広域的な高濃度汚染エピソードの実態と原因を把握し,越境大気汚染問題への関心を高めた論文と考えています。また,国内に多数存在する大気汚染常時測定局の測定データをもとに,広域汚染の動態を把握しようとするアプローチは,広域汚染の解析手法及び常時測定局データの有効活用法として,今後の参考になれば幸いです。


 受賞者氏名 :大原利眞,黒川純一,清水 厚
 受賞年月日 :2009年9月16日
 賞の名称 :社団法人大気環境学会論文賞 (社団法人大気環境学会)
 受賞対象:2007年5月8,9日に発生した広域的な光化学オゾン汚染-オーバービュー- (J.Jpn.Soc.Atmos.Environ., 43(4), 198-208, 2008)

 受賞者からひとこと:
 本論文は,2007年5月8日,9日に発生した広域的な光化学オゾンの高濃度汚染について,全国の光化学オキシダント測定データと東アジアスケールの化学輸送モデルを統合した解析により,中国や韓国で排出されたオゾン前駆物質によって生成された光化学オゾンによる越境大気汚染が高濃度オゾンの主因であることを示したものです。この論文に関係する研究結果は,汚染発生直後から様々なマスメディアに取り上げられましたが,偏った報道をされることも多いため,誤解が広がる前に研究結果を学術誌に公表することを目指して,他の2編の論文(同時受賞の観測データ解析論文及びモデル解析論文)とともに短期間でまとめました。越境大気汚染問題への学術的・社会的な関心を高め,東アジアにおける国際的な大気環境管理の必要性を示したことが評価されたものと考えています。


 受賞者氏名:栗林正俊,大原利眞
 受賞年月日:2009年9月16日
 賞の名称:社団法人大気環境学会論文賞 (社団法人大気環境学会)
 受賞対象:中国におけるオゾンによる稲作影響の現状評価と将来予測 (J.Jpn.Soc.Atmos.Environ., 43(1), 55-66, 2008)

 受賞者からひとこと:
 本論文は,排出インベントリと化学輸送モデルによって計算された対流圏オゾンが,中国のイネに与える影響を,減収量および経済損失として評価したものです。オゾン影響の現状を調べるだけでなく,各種排出シナリオに基づくオゾンの将来予測濃度を用いた検討を行い,オゾン濃度に寄与するNOx排出量とイネ減収量が比例関係にあること,長江流域の減収量が大きいことなどを示しました。第一著者は筑波大学連携大学院の修士学生(当時)であり,学生・若手研究者の論文としても高く評価されたものと考えられます。


 受賞者氏名:珠坪一晃,ウィラシニー・ユーチャッチャヴン,窪田恵一
 受賞年月日:2009年11月29日
 賞の名称:第46回環境工学研究フォーラム優秀ポスター賞
(社団法人土木学会)
 受賞対象:パームオイル製造廃液 (POME) の嫌気分解特性の評価 (第46回環境工学研究フォーラム講演集, 105-107, 2009)

 受賞者からひとこと:
 第46回環境工学研究フォーラム(土木学会 環境工学委員会主催)において,優秀ポスター発表賞を授与されました。対象の研究は,不適切な処理により,水環境汚染や温室効果ガス(メタン)の大気放散の要因となっているパーム油製造廃液(Palm Oil Mill Effluent: POME)の処理技術の開発に関するものです。POMEには,植物油由来の高級脂肪酸(パルミチン酸,オレイン酸等)が多く含まれており,微生物分解が困難な廃液の一つです。本研究では,嫌気条件下における集積培養試験により,高級脂肪酸の分解代謝機構の調査とその分解に関わる細菌群の同定を行い,POMEの適切処理のための基礎知見を得ることが出来ました。本研究は,東北大学(原田秀樹教授),長岡技術科学大学(山口隆司准教授)との共同研究により実施しているもので,現在,マレーシアのパーム油製造工場においてPOMEの実証メタン発酵処理試験を行ってます。パーム油の様な資源作物は,気候が温暖で人件費の安い開発途上国に生産が集中しているため,大部分のPOMEは適切な処理が行われていない状況にあります。今後も実証処理試験による処理技術の最適化を進め,コベネフィット型処理システムの確立を目指していきたいと考えています。


 受賞者氏名:田中 敦,瀬山春彦,柴田康行
 受賞年月日:2009年12月14日
 賞の名称:2009年度室内環境学会論文賞 (室内環境学会)
 受賞対象:Lead and cadmium in indoor dust in Japanese houses-relationship with outdoor sources (Indoor Environ., 11(2), 93-101, 2008)

 受賞者からひとこと:
 受賞対象となった論文は,特別研究「化学物質の動態解明のための同位体計測技術に関する研究」の一環として行われた,日本家屋の室内の埃(室内塵)に含まれる鉛とカドミウムの濃度レベルを調べた研究成果報告で,石橋由梨(北里大学),吉永淳(東京大学)両氏が中心となって進められた共同研究です。室内環境汚染の一つとして室内塵が考えられますが,その中に含まれている重金属など有害物質の濃度や動態に関する詳しい検討は,これまで行われて来ませんでした。本研究では,国内の一般家庭から集めた室内塵,周辺土壌,室外ダストに含まれる鉛,カドミウム濃度を調べました。その結果,諸外国で行われた既往の研究に比べ,両金属のわが国の室内塵汚染のレベルは低いことが示唆されました。また,室内塵中鉛,カドミウム濃度は,周辺土壌,室外ダスト中濃度とごく弱い正の相関関係があったのみであり,室外汚染源はほとんど寄与していないと推定されました。安全で快適な日常生活を維持して行く上で,これからも室内塵中の化学物質の分析とその起源推定を続けて行くことが大切だと考えています。