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NIES Annual Report 2010 AE-16-2010

 本英文年報は海外の研究者や行政担当者など対象に,独立行政法人国立環境研究所の調査・研究の現状を紹介することを目的として年1回発行されています。第2期中期計画の調査・研究部門を担う,研究プログラム担当の3センターと1グループ,6つの基盤研究組織および環境研究基盤技術ラボラトリー,環境情報センターで実施された調査・研究,国際交流,広報活動等の概要が分かりやすく記述されています。また,研究所の組織,予算,研究施設・設備の状況,研究成果の一覧,その他研究所の活動の全体像を知る上で役に立つ様々な資料が掲載されています。

(循編集委員会英文年報班主査 中山忠暢)

国立環境研究所特別研究報告 SR-93-2010
「貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価に関する研究 (特別研究)」
(平成19~21年度)

 閉鎖性海域で最大の水環境問題である貧酸素水塊に着目し,その発生の主因である水塊中の有機物の分解や底泥への沈降,底泥による溶存酸素消費,代表的な種類の二枚貝に対する影響評価,水質再現のための3次元流動・生態系モデル・シミュレーションの構築・改良について,東京湾を調査対象として行ってきた結果を取りまとめました。この中で(1)陸起源のものより内部生産(植物プランクトン)に由来する粒子態の有機物の分解性(および酸素消費能)が非常に高いこと,(2)底泥の酸素消費速度は底生生物の現存量より泥温と硫化物含量に大きく依存すること,(3)劣悪環境である運河部での二枚貝の現場飼育試験において貧酸素水塊に対する耐性は種ごとに顕著に異なっていたこと,(4)3次元流動・生態系モデル・シミュレーションにおいて,浮遊系の有機物を易分解性・難分解性のものに区別し,底泥の酸素消費速度の実測値を適用することにより水質再現精度が上昇したことが明らかとなりました。以上、得られた結果は、研究成果としてはもとより,東京湾以外の貧酸素水塊に見舞われている閉鎖性海域の水環境管理・対策実施のための調査研究手法を例示したものと考えております。

 

(水土壌圏環境研究領域 牧 秀明)