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2012年2月29日

研究現場の安心・安全の観点から国立環境研究所が取り組んだこと

【東日本大震災復旧・復興への取り組み】

災害対策本部事務局

はじめに

 2011年3月11日の東日本大震災によって国立環境研究所の研究活動に大きな影響が及びました。震災からの復旧と同時に新しい研究が始まったことや夏の節電等の取り組みについて、この国立環境研究所ニュースで紹介してきました。また、職場としての研究所も大震災を契機として大きく変わり、地震を想定した大規模全所避難訓練が行われるなど、所員の防災への意識が高まりました。

 今回は研究の現場である研究所の震災被害、今後の安全・安心という面からいくつか報告をします。

震災直後の研究所

 震災当日の記録では、茨城県から東北地方にかけた太平洋側でM7を超える大地震が14時46分から約40分の間に4回以上起きており、研究所のあるつくば市では震度6弱の最初の大きな地震を含め、強い揺れが断続的に何度も起こりました。

 つくば市の研究所本講内においては幸いにも人的被害はなかったものの、地震の揺れにより建物、研究施設(機器)に被害が多数発生し、電気・ガス・水道等のライフラインが停止しました。その復旧は、漏電・ガス漏れ・漏水による二次災害を起こさないよう慎重に行われたため時間を要し、所内での研究活動並びに通常業務が約1週間にわたり実質的にできない状態となりました。

 所外においても震災直後からつくば市内各所で停電が発生し、至る所で道路の陥没や信号機停止による大渋滞が発生しました。つくばエクスプレスを含めた公共交通も完全にストップしたため、所員の中に帰宅困難者が発生し、研究所内に宿泊を余儀なくされたり、数十キロの道のりを歩いて帰宅した者もいました。

 今回の地震で、避難誘導、情報の伝達、帰宅困難者対策等で所内体制の見直しを迫られる事案もありましたが、3月14日には理事長を本部長とする東日本大震災対策本部を所内に設置し、情報の一元管理と所内指示の一貫性を確保する体制をとりました。その結果、所内の水道・暖房が停止し、多くの場所で電気利用制限を余儀なくされた中でも、所員一体となってこれら基本インフラの復旧作業を行い、3月22日には所内の基本的な機能を概ね復旧することができました。

復旧の事例

 様々な影響があった中で、今回は情報インフラの復旧の流れについて少しご紹介します。震災が起こったのは金曜日午後です。翌週の月曜日から電気が一部で復旧したため、まずはメール等の情報基幹システムの復旧を行いました。今回の震災では情報が把握できないことが大きな不安となりましたが、関係者の努力により情報インフラの復旧はスムーズに行われました(周辺研究所では1週間以上にわたりメールが不通になったところもあったそうです)。しかし、その後発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、深刻な電力不足が発生し、首都圏では計画停電が行われる非常事態となりました。茨城県は激甚災害の指定地域であるため、つくば市での計画停電は行われなかったものの、不測の停電リスクもあったことから、研究活動をすぐに再開できない状況が続きました。また、無人状況での急な停電によるインフラ損傷等を考慮し、やむなく夜間のサーバ停止などの緊急措置をとりました。

 一方、研究所中央部にある図書室書庫では学術雑誌のバックナンバー等大量の本が落下するなど危険な状況でした。散乱した本は余震沈静化まで手がつけられませんでしたが、その後、図書室スタッフと有志研究者の献身的な協力により、ほぼ元通りに書棚に復旧しました。

写真 地震の揺れにより多くの本が落下し、危険な状態となりました。

夏の節電結果

 夏季の電力不足に対応するため、国立環境研究所でもこれまでに無い規模での節電を行いました。その内容については前号で報告があったとおりです。つくば市環境都市推進委員会によると、この夏の節電期間、東京電力管内全体で14.9%の節電が行われ、つくば市域では21.7%減、市内大学・研究機関では26.2%の削減であったそうです。国立環境研究所は27.4%削減であり、節電努力では平均以上の結果となりました。

災害に対する備え

 9月には所内全所を対象とし、地震を想定した大規模な避難訓練が行われました。その後実施した所内アンケート調査では、これまでとは比較にならない多くの意見が寄せられ、所内全域への災害情報の迅速な伝達方法、安全な避難経路の確保等につき様々な意見や要望が出されました。具体的には、危険周知は館内放送だけではなく建物外でも聞こえる屋外放送やサイレン、外国人用の案内、避難場所に多人数を短時間に集める危険性、安否報告手順やスタッフ識別方法など多岐にわたる検討事項が指摘されました。現在、これら意見を踏まえて、より安全に避難ができるよう避難経路の整備改修等はじめ、具体的な検討が各所で進められています。また、これまでに災害時に必要な備品の総点検が行われ、ヘルメットや懐中電灯をはじめとする災害時必需用品が全所に整備されました。今後、更なる防火・防災対策が進められていく見込みです。

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