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2016年2月29日

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)及び、京都議定書第11回締約国会議(CMP11)に参加して

社会環境システム研究センター 藤野純一
GOSAT/GOSAT-2プロジェクト 松永恒雄・Pang Shijuan・齊藤誠

はじめに

 2015年11月30日から12月12 日まで、フランス・パリで、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)、京都議定書第11回締約国会議(CMP11)が開催され、連日深夜までおよぶ交渉の末、2020年以降すべての国が協調して温暖化問題に取り組むための仕組みを示した新しい国際条約「パリ協定」を満場一致で採択して閉幕しました。国立環境研究所(以下国環研)はNGOとしてCOP21/CMP11に参加し、サイトイベントや展示活動などを通じて気候変動に関する最新の研究成果の紹介を行いました。国環研からの参加者は、社会環境システム研究センターより亀山康子室長、藤野純一主任研究員、久保田泉主任研究員、国環研GOSAT/GOSAT-2プロジェクトより松永恒雄室長、齊藤誠研究員、Pang Shijuan高度技能専門員の6名です。以下にCOP21/CMP11における国環研の活動を紹介します。

社会環境システム研究センターの活動

 社会環境システム研究センターでは、3名の研究者が参加し交渉プロセスの分析、研究成果の発信、情報収集等を行いました。亀山室長は、12月10日に日本パビリオン[1]において、サイドイベントを主催し、米国や欧州等の実際のデータを使いながら、新たに開発した気候変動緩和策の進捗を計測するための指標について紹介しました。久保田主任研究員は、交渉のプロセスを分析する研究を進めるため、どのような要因が積み重なって合意がなされていくのかを国際法の視点から観察し、パリ協定成立の時まで見届けました。また、一般向けの解説記事をパリから速報しました[2]

 藤野主任研究員は、アジア低炭素社会研究を通じて得られた研究成果や現場の実践例を紹介するため、12月7日18時30分から外務省・環境省・IGES(地球環境戦略研究機関)・マレーシア工科大学と共催でUNFCCC公式サイドイベント「東アジア低炭素成長対話」の進行役を担当しました[3]。丸川環境大臣の挨拶、堀江大使の基調講演、ベトナム、カンボジア、マレーシアにおける低炭素社会に向けた具体的な取り組みと課題が参加者と共有され、質疑がなされました。本サイドイベントの様子はNHK朝のニュースで紹介されたほか、国際NGOのIISDが選ぶ注目のサイドイベントに取り上げられました[4]。また、日本パビリオンにおいて、京都発の小学校向け環境教育プログラムがイスカンダル・マレーシア地域に展開している様子や、ホーチミン市などアジアの都市で低炭素社会計画づくりを進めている様子を12月2日に、特に東京都の建築物報告書制度をマレーシアのプトラジャヤ市およびイスカンダル・マレーシア地域への適用を試みているケースの紹介を12月7日に、アジアの国を対象とした低炭素社会計画づくりの展開の紹介を12月5日に行いました。

 パリ協定の中身が本当に実現するかは、具体的な対策ができるかにかかっています。良い研究成果を上げながらさらなる実践に繋げていくことが本センターの使命だと改めて思いました。

[1]日本パビリオンホームページ
  http://cop21-japanpavilion.jp/
[2]全国地球温暖化活動防止推進センター(JCCCA)のCOP21会議レポート
  http://www.jccca.org/trend_world/conference_report/cop21/
[3]UNFCCC公式サイドイベント「東アジア低炭素成長対話」ホームページ
  http://www-iam.nies.go.jp/aim/event_meeting/2015_cop21/2015_cop21.html
[4]IISDによる12月7日のサイドイベント特集記事
  http://www.iisd.ca/climate/cop21/enbots/7dec.html/

写真:マレーシア工科大プレスカンファレンス
12月7日14時 マレーシア工科大学主催のプレスカンファレンスでイスカンダル・マレーシア地域を構成する5つの基礎自治体を対象に作成した低炭素社会計画を公表する様子

国環研GOSAT/GOSAT-2プロジェクトの活動 

 国環研では環境省、宇宙航空研究開発機構と共同で温室効果ガス観測技術衛星(いぶき、GOSAT、2009年打上げ)及びその後継機(GOSAT-2、2017年度打上げ予定)の運用・開発を行っています。COP21/CMP11においてはIGESと共同で展示ブースを2週間設置し、GOSATによる最新観測結果やGOSAT-2の計画、低炭素社会関係の研究成果等を、ビデオ上映、ポスター掲示、パンフレット等の印刷物やその電子ファイルを収納したUSBメモリ、関連グッズの配布を通じて来場者の方々に紹介しました。特に6年以上にわたるGOSATデータを用いた二酸化炭素及びメタンの全球濃度分布ビデオや大都市等からの人為起源二酸化炭素・メタンの検出に関する記者発表要約資料は好評でした。

 また12月4日に日本パビリオンで行われたサイドイベント「「Global Carbon Monitoring – Towards Modeling, Projection and Policy Decision」では、齊藤研究員が「Application of GHG observation for carbon flux modeling」と題する講演を行い、全球規模の炭素収支分布の推定にGOSATデータを使った実例等を紹介しました。

日本パビリオン

写真:共同展示ブースの様子
IGES/NIES共同展示ブースの様子

 COP21/CMP11の会場には公式サイドイベント/展示会場のほか、参加各国によるパビリオンも多数設置されています。水引をモチーフとしたデザインの日本パビリオンでは「Transformation! -Low carbon & climate resilient society-」をメインテーマとして、関連機関による温暖化関連活動のポスター掲示、資料配布や講演会等が連日行われました。国環研も日本パビリオンにて、上述のサイドイベントに加えて、低炭素社会やGOSAT/GOSAT-2に関係するポスターの掲示、資料の配布等を行いました。

最後に 

 今回のCOP21/CMP11は多数の死傷者を出したテロから間もないパリで開催されました。さすがに空港、市内の警備は厳重でしたが、COP21/CMP11参加者に不自由がないよう、関係機関やパリ市民の皆様には大変な便宜を図っていただきました。ここに感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

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