ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2016年6月30日

国環研の新たな挑戦

理事 原澤 英夫

 今年4月より、国立環境研究所(以下、国環研)の第4期中長期計画が始まりました。同時に、福島県環境創造センター(福島県三春町)に国環研の福島支部が新設され、本格的な活動を開始しました。ここでは、計画策定の背景、中心となる課題解決型研究プログラム、衛星観測、エコチル調査、気候変動戦略連携オフィスなどの研究事業について紹介します。

 環境政策の寄って立つべきは環境基本法であり、それを具体化する計画が環境基本計画です。現在の第4期環境基本計画(平成24年3月策定)に基づいて環境政策が実施されていますが、その理念として、「安全の確保を前提として、低炭素・循環・自然共生の各分野を統合的に達成すること」が掲げられています。さらに平成27年7月には中央環境審議会(以下、中環審)が、低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築を政府に意見を申し出ています。

 従来、低炭素社会づくりや循環型社会づくりなどが個別に進められてきましたが、それらを統合的に進めることの必要性が認識され、すなわち低炭素社会、循環型社会、自然共生社会の3つの社会の統合(3社会統合と呼びます)が喫緊の課題であるとの認識が高まりました。安全の確保は、3社会を支える基盤として位置づけられていますが、東日本大震災の被害や地球温暖化による影響が顕在化し、人々はより安全で安心な社会を望んでいることから、安全安心社会を加えた4社会を統合して、持続可能な社会の実現が大きな目標になっています。

 こうした環境政策の新たな展開をうけて、中環審により取りまとめられたのが、「環境研究・環境技術の推進戦略(以下、推進戦略)」(平成28年8月)です。推進戦略では、低炭素社会の実現に資する研究など5つの研究領域に加えて統合領域が設けられ、4社会・統合アプローチの必要性と今後実施すべき研究課題が示されています。国環研は、これらの研究課題を中核的研究機関として進めることが期待されており、果たすべき役割として4つの項目が示されました。その第一にあげられているのが、「経済・社会的な課題の解決を見据えた統合的な研究の先導」です。ちなみに、他の3つは行政施策に資する科学的知見などの推進、大学・地域の環境研究拠点・民間企業等との連携強化、国際的な連携の推進です。

 前期までの温暖化、循環型社会など研究プログラムで得られた知見を最大限に活かしながら、第4期では「課題解決型」研究として4社会の実現および統合アプローチに貢献する研究プログラムを設定しました。参考までに表に国環研の体制と研究について変遷の概略をまとめています。環境問題を解決に導き、持続可能な社会づくりに貢献できる研究プログラムを構成したことが第4期の大きな特徴の一つです。研究プログラムの実施にあたっては、モニタリング~現象解明~予測モデル~対策評価など、従来国環研が培ってきた基礎~応用~実装にいたる「繋ぐ」機能に、さらに磨きをかけて、研究を進める必要があります。もちろん私たちが直面している環境問題は、地球~地域~生活まで多岐にわたり、また原因が人間の生存や活動に根差していることから解決が非常に困難な問題であり、国環研にとっても新たな挑戦とも言えるものです。

 国立研究開発法人の使命である日本全体の研究成果の最大化に、国環研として貢献することの鍵は、課題解決型研究を進めることで、推進戦略にも示された国内外の研究機関や多様な主体との連携を如何に広げ、強化していくかです。国内、国際的な研究拠点としての取組みを積極的に進めることを意図して、研究事業を新たに定義して、研究所として組織的、継続的に進めることも新しい取組みです。研究事業は、しっかりとした研究成果に裏打ちされ、また、国内外機関や主体との連携をとることによって、より研究が進み、研究プログラムの目標としている持続可能な社会実現に資する活動になると考えています。より具体的には、衛星観測(GOSAT)、エコチル調査を研究所の中核的な研究事業として位置づけるとともに、政策・社会ニーズの高い、3つの新たなオフィス(観測・適応、災害廃棄物、社会対話)や従来のリスク管理も研究事業として位置づけました。これらの研究事業は、7研究センター及び福島支部の所内連携はもとより、国内外の機関との連携を積極的に進める必要があることから、連携部門を新設して、研究事業に関わる情報を集約し、共有するとともに、国内外の連携を一手にひきうけて進めることも新たな挑戦です。

 今年は、国環研が設立されてから43年目を迎えます。この間、国内外の社会、経済、環境も大きく変化し、国環研に対するニーズや期待も変わってきました。昨年は国連による新たなSDGs(持続可能な開発目標)の公表やCOP21のパリ協定の締結など、世界も大きく動いています。そうした中で新たな挑戦も行いながら、持続可能な社会の実現に資する研究を実施していきます。国内外のニーズに如何に答えられるか、国環研の存在意義も問われる第4期になると考えています。これまで以上のご支援、ご協力をお願いします。

(はらさわ ひでお)

表 国立環境研究所の体制・研究の変遷

第1期中期計画 第2期中期計画 第3期中期計画 第4期中長期計画
  2001年4月~ 2006年4月~ 2011年4月~ 2016年4月~
体制 独立行政法人 独立行政法人(非公務員型へ) 独立行政法人(2015年4月より国立研究開発法人) 国立研究開発法人
6研究領域、3研究センター、環境研究基盤技術ラボ 6研究領域、3研究センター+1研究グループ、環境研究基盤技術ラボ 8研究センター 7研究センター、福島支部
研究類型        
研究プログラム 6重点研究プログラム:温暖化、成層圏オゾン、化学物質、生物多様性、東アジア、大気汚染 4重点研究プログラム:温暖化、循環型社会、環境リスク、アジア自然共生 課題対応型研究プログラム:5重点研究プログラム:温暖化、循環型社会、化学物質管理、東アジア、生物多様性、5先導研究プログラム 課題解決型研究プログラム:低炭素、資源循環、自然共生、安全確保、統合研究、災害環境研究
政策対応型研究 2政策対応型調査・研究:循環型社会・廃棄物、化学物質環境リスク   災害環境研究(2013年3月に中期計画に位置づけ)  
基盤的調査研究 6研究領域 6研究領域 8研究分野 8研究分野+災害環境分野
研究基盤整備 知的研究基盤(環境標準試料等) 知的研究基盤(環境標準試料等) 基盤整備(GOSAT、エコチル調査、タイムカプセル他) 基盤整備(地球観測、タイムカプセル他)
研究事業       GOSAT、エコチル調査、化学物質リスク、観測・適応、災害廃棄物、社会対話

執筆者プロフィール

原澤 英夫の写真

第4期中長期計画づくりでは、研究所をあげて取組み、社会のニーズにも応えられる計画ができたと自負しています。これまで研究者一人ひとりが研究力を高めることが国環研の原動力と考えていましたが、今回の経験から、職員全員のチームワークが大切なことを改めて実感しました。

関連新着情報

関連記事

関連研究報告書