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2017年6月30日

福島支部の研究施設について

特集  国立環境研究所 福島支部を拠点とした災害環境研究の新たな展開
【研究施設、業務等の紹介】

丸尾 武史

 2016年4月、国立環境研究所(以下、国環研)の新たな組織として福島支部が開設されました。福島支部は国環研として初めての地方組織であり、茨城県つくば市にある本部とは離れた福島県三春町内の「福島県環境創造センター」の中にあります(図1)。三春町は、福島県の中通りのほぼ中央にある、郡山市と田村市に挟まれた小さな城下町です。福島第一原子力発電所から約40-50 kmのところにあり、避難指示区域からは少し離れた位置にあります(図2)。2017年4月には、三春町町営バスの一部が環境創造センター経由便として運行を開始しました。このことにより、三春駅経由でのJRからのアクセスも良くなりました。福島県環境創造センターは、交流棟・本館・研究棟の3つの建物が連なっています(図3)。このうち国環研福島支部は研究棟の中にあり、研究棟には日本原子力研究開発機構(JAEA)がともに入居しています。また、交流棟(通称:コミュタン福島)は一般来場者に放射性物質などについて学んでもらう学習施設、本館は福島県が業務を行う施設という役割を持っています。このたび、新たに福島県に拠点を設けたことで、国環研が東日本大震災直後から進めている災害環境研究を、より地域に根ざした形で展開することができるようになりました。また、福島県・JAEA・国環研の三機関が同じ施設内で活動することにより、三機関が密接に連携して調査研究などを進められるようになりました。

図1 福島県環境創造センターの外観
図2 (クリックで拡大画像を表示)
図2 福島県環境創造センター(三春町)の位置
図3 (クリックで拡大画像を表示)
図3 福島県環境創造センター三棟の役割(福島県環境創造センターパンフレットから抜粋)

 福島支部には現在、職員・契約職員・派遣職員・常駐業者あわせて約45名が勤務しています。ただし、災害環境研究に携わっている人はそれだけではなく、つくば本部に在籍し、福島支部を兼務している研究職員もおり、つくば本部と福島支部との間でも連携した形で調査研究を進めています。研究棟は2016年の3月末に竣工し、4月初めから管理部門の職員が先行して赴任しました。その後、什器や研究機器等の搬入、設置、基盤整備等の立ち上げや事務アシスタントスタッフの研修等を進めてきました。同年6月には研究者等も赴任し、6月7日に福島支部開所式が開催され、本格的に業務が開始されました。また、7月には環境創造センター全体としてのグランドオープン記念式典やイベントが開催されました。

 次に、福島支部の施設構成について説明します。部屋は大きく分けると事務居室、会議室、実験室等からなります。事務居室は職員がデスクワークを行う場です(図4)。会議室は、通常の打ち合わせのための会議室のほか、つくば本部や所外の組織との遠隔会議を行うためのTV会議室があり、福島支部にいながら、つくば本部で開催されるセミナー・研修や会議に参加したり、遠方で出向くことが難しい相手と気軽に打合せをする手段として利用されています。また、所外の方を招いて議論を交わしたり意見交換を行うワークショップ等を開催するための会議室もあります。実験室は、大きくは廃棄物の管理・処分に関する研究を行う実験室と、環境動態に関する研究を行う実験室に分かれ、主に放射性物質に関係した実験・分析が行われています(図5)。ここでは例えば、「研究プログラムの研究実施状況1」でも紹介したとおり、数トンの土壌等を詰め込んで最終処分場での物質の動きを模擬的に調べる「ライシメーター」による実験が行われたり、「ゲルマニウム半導体検出器」等の特徴的な実験装置・機器を用いて試料中の放射線量が測定されたりしています。

図4 事務居室の一つ、管理課
図5 実験室の一つ、廃棄物等試料機器分析室

 さらに実験室では、安全に実験を行えるよう、有害物質の拡散を防止するドラフトチャンバー等の設備が設置されているほか、それぞれの実験室・測定室の前には体に付着した放射線量を検査するための装置が置かれています。実験室があるエリア内は放射性物質を取り扱うため、廊下を含めて「震災放射線研究エリア」と指定し、つくば本部の施設と同様に、事前に登録された者のみ入ることができるようになっています。研究従事者はクイックセルバッジの常時着用、一時立ち入り者については、ポケット線量計の携帯が必要で、被ばくした放射線量の管理が行われています。また実験室のほかにも、化学薬品を安全に保管する薬品庫、現場で採取した試料等を保管するための冷凍・冷蔵室、野外調査で使用する機材などを置くための保管庫などが設けられています。

図6 2016年のグランドオープンでの見学ツアーの様子

 福島支部は、一般の方の見学も受け付けています。福島県の担当にお申込みいただければ、福島県やJAEAの施設と合わせてご覧になることができます。福島県環境創造センターでイベントが行われる際には、施設の見学ツアーが開催されます(図6)。国環研の見学ツアーでは、まず福島支部全体の活動内容について概要を紹介しています。次に、環境創生研究プログラムおよび災害環境マネジメント研究プログラムの内容を、実際に研究で使用しているタブレット端末等を用いながら説明します。最後に、実験室を外側からご覧いただきながら、廃棄物の管理・処分に関する研究、環境動態に関する研究について説明いたします。今後も様々なイベントに応じて見学ツアーが開催される予定ですので、ぜひお越しいただければと思います。

 最後に、被災地の環境回復・創造のため、我々は走り続けます。

(まるお たけし、福島支部 管理課 企画総務係長)

執筆者プロフィール:

執筆者写真 丸尾 武史

国立環境研究所に入所してはや7年目になります。2010年12月に入所し、その約3か月後に東日本大震災が起こりました。今はその震災に関わる仕事。福島に来て、改めて身の引き締まる思いです。自分に何ができるのか…悩み続ける毎日です。

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