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2017年12月20日

適切排水処理システムの実用的な展開に関する研究

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-125-2017

表紙
SR-125-2017 [5.30MB]

 人間活動の結果排出される多量の排水は、国内や先進国においては、水質保全の観点から好気性処理が施されていますが、電力消費が大きい等の経済的な理由から、開発途上国では、普及が妨げられています。また、東南アジア地域には資源作物とその加工品(砂糖、パーム油、バイオエタノール等)の生産が活発で、それらの製造・加工工程からは、有機物濃度の高い難分解性の廃液が多量に排出され、メタンなどの温室効果ガスの要因となっています。

そこで、本研究では、省・創エネルギー型の処理技術であるメタン発酵を、技術が未適用の低有機物濃度排水の無加温処理、難分解性物質を含む高有機物濃度廃液の処理に適用するための基礎技術開発と性能実証を国内外の研究機関、民間企業と連携して行いました。

 その結果、本研究で開発を行ったグラニュール汚泥床は実産業排水(低濃度の飲料製造排水)の無加温メタン発酵処理においても、十分に高い排水処理性能(処理水質、メタン回収率)を安定的に発揮できることが明らかになり、同技術の実現化の可能性が強く示唆されました。また高濃度の難分解性有機物を含む、バイオエタノール製造廃液の適切メタン発酵処理術の開発に成功し、その安定的な運転手法、処理水の再利用方法の検証を行うことができました。

 今後、本研究の成果を有機性排水処理の省エネルギー化とそれに伴う温室効果ガスの削減、開発途上国における排水処理技術の普及などの施策に結びつけ、水環境および地球環境の保全に役立てていきたいと考えています。


(国立環境研究所 地域環境研究センター 地域環境技術システム研究室長) (現職名:国立環境研究所 地域環境研究センター 副センター長 兼 環境技術システム研究室長 珠坪 一晃)