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2017年12月20日

沿岸海域の底質環境改善技術開発と評価に関する研究

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-129-2017

表紙
SR-129-2017 [10.4MB]

 東京湾等の都市周辺海域では貧酸素水塊の発生と底質の悪化が顕在化しています。底質改善技術として製鋼スラグ等の産業副産物の底泥への添加法等が検討されてきましたが、その効果については様々であり、特に実現場での評価や知見が充分とは言えないのが現状です。一方最近になって、排水処理技術として着目されてきた微生物燃料電池を海域の底質に適用して、底質改善が行える可能性が示されてきていますが、その効果については不明でした。

 以上のような状況を踏まえて、本研究では、東京湾の実現場で製鋼スラグの底質散布や実験室内での検討も含めた堆積物微生物燃料電池(SMFC)適用と効果の評価を行うべく、調査研究を進めてきました。

 東京湾奥部の底質を用いた室内実験でも現場試験でもSMFC適用により酸化還元電位が増加することと、間隙水中の毒性物質である硫化水素、栄養塩の一つであるリン酸態リンが減少する効果を発揮することがわかりました。製鋼スラグを添加した時には、貧酸素水塊の原因である底質に、底層水の溶存酸素消費が抑制される効果があることが示されました。ただしいずれの場合も、ゴカイなどの底生動物の生息状況を改善する効果は示されず、東京湾広域におけるSMFC適用効果のシミュレーション結果でも、湾内の貧酸素水塊減少の効果は示されませんでした。

 本研究成果により、SMFC適用は硫化水素の減少などの底質中の物質的な変化を生じさせる効果を有することが示されました。今後は東京湾内外の他の現場での本技術の適用効果評価のために、さらに規模の大きな現場試験を行い、当該技術の改良と底生生物生息環境改善のための検討を進めていくことが期待されます。


(国立環境研究所 地域環境研究センター 牧 秀明)

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