- 予算区分
- AF 奨励
- 研究課題コード
- 0304AF351
- 開始/終了年度
- 2003~2004年
- キーワード(日本語)
- 生物多様性,染色体レース,遺伝的変異,生物統計学,保全単位
- キーワード(英語)
- BIODIVERSITY,CHROMOSOME RACE,GENETIC VARIATION,BIOSTATISTICS,CONSERVATION UNIT
研究概要
遺伝的固有性に基づいて設定される進化的重要単位(ENU)や管理単位(MU)の基準だけでは,遺伝的分化が不十分で種分化途上にある繁殖集団の固有性が認識出来ない.つまり,充分な遺伝的分化が起こっていると考えられる「生物種」を保全の最小単位として見たときの遺伝的固有性を最大にするだけでは「種」に内在する遺伝的固有性は評価されないため,種を構成する地域集団間の遺伝的多様性も含めて保全単位が設定されなければならない.従って,生物集団の保全や多様性の評価,また絶滅リスク評価を行う際にはこれまでのように「生物種」を最小保全単位と考えるだけでは不十分であり,繁殖集団を保全単位とし,具体的データを取得していく必要があると考える.本研究で材料となるサッポロフキバッタは北海道・サハリン・国後島に生息する昆虫で、これまで局所的に分布する集団に形態および染色体レベルの変異が存在する。通常の核型集団(XO/XX集団)からどのようにして変異集団(XY/XX集団)が派生したのかをDNA配列を基にした統計解析により明らかにし,染色体変異集団の保全単位としての位置付けについて考察する.
全体計画
野外よりサッポロフキバッタを捕獲し,各個体の染色体構造をCバンド分染法により調査する.また個体の組織からDNAを抽出し,ダイレクトシークエンス法によりミトコンドリアDNAの複数領域の配列データを取得する.取得された配列データから繁殖集団間の系統的関係を類推するため,距離行列および遷移行列データに基づく系統樹を構築する.更にそこから得られた合意樹から,対立する系統地理的仮説のいずれが支持されるかについて,最尤法を用いて検討する.また保全単位の抽出に有効である入れ子型分岐分析を用いて,固有のハプロタイプの系統的・空間的位置付けをおこなうことで,遺伝的固有性の高い地域を提示する.
今年度の研究概要
現在行っているDNA配列情報の取得を引き続き行う.得られた配列情報をもとに,地域集団を操作的分類単位と見なした分子系統樹を作成し,核型進化についての仮説検証を行う.