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重点1. 地球温暖化の影響評価と対策効果
重点1-1 炭素循環と吸収源変動要因の解明(平成 17年度)
1. A Special Core Research Project on Climate Change Impacts and Mitigation Assessment
1-1 Studies on Carbon Cycle Mechanism and its Controlling Factors

研究課題コード
0105SP011
開始/終了年度
2001~2005年
キーワード(日本語)
地球温暖化、炭素循環、二酸化炭素、陸域生態系、海洋
キーワード(英語)
GLOBAL WARMING, CARBON CYCLE, CARBON DIOXIDE, TERRESTRIAL ECOSYSTEM, OCEAN

研究概要

人間活動により大気中に放出された二酸化炭素が気候変動をもたらすことは疑いのなく、大気中濃度をどのレベルに安定化させるか、そのためには人為排出量をいくら削減すべきかを明らかにし、それを実現する施策を進める必要がある。
 京都議定書では人為的な森林吸収増加活動などが二酸化炭素削減対策として認められたため、植林など人為活動による炭素蓄積を十分な科学的根拠を持って評価することが必要になった。さらに長期的には、人為的な森林吸収増加活動だけではなく、森林保全や炭素の隔離などを含むあらゆる炭素固定を評価する方向に向かう可能性もある。したがって、森林規模からグローバルな規模まで様々なスケールでの研究を総合的に遂行し、炭素循環の現状把握、メカニズムの解明、将来予測を行う必要がある。
 すでに国立環境研究所では地球環境研究総合推進費や戦略基礎研究、地球環境モニタリングなどにより、多くの研究や長期観測を行っているが、その実績をふまえ新たな研究を展開する。研究は大別して陸域、とりわけ地球規模の二酸化炭素変動に大きな影響を与える亜寒帯林による炭素蓄積に関わる研究、主として北太平洋における海洋による二酸化炭素吸収に関わる研究、および、陸域と海洋の吸収比をグローバルに把握する研究から構成される。陸域の二酸化炭素吸収に関しては、森林規模、地域規模、亜大陸規模というスケールの異なった規模において、大気観測から陸域吸収分布を推定するトップダウンのアプローチを行うと同時に、森林炭素蓄積や二酸化炭素収支の観測と、遠隔計測と森林モデルによるスケールアップ(ボトムアップアプローチ)を行い、その整合性を検証する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

地球環境研究は、長期の観測とそれに基づくデータの解析、モデル計算との比較などによって実施するものであり、年度毎に研究成果が出るものではない。研究計画の初期には観測手段(装置やシステム)の開発により多くの努力を払うが、観測の進展に並行して改良を加える。また、観測結果の解析は恒常的に行い観測方法の改善にフィードバックする。長期の観測結果の季節変動や長期変動を分離解析し、地域の特性や気象状況との対比を検討する。並行してモデルの開発や既存のモデルの適用を試み、その結果と観測結果が比較検討され、モデルの開発にフィードバックされる。モデルに必要なデータベースもこれらの進展に対応して整備する事になる。従って、本研究においては年度毎の研究成果目標は設定しない。

今年度の研究概要

(1)グローバルな陸域・海洋吸収の評価を目的として、酸素/窒素比や二酸化炭素中の炭素・酸素の同位体比の観測を継続する。同時に国際的データ統合に向けた同位体比測定の比較実験等を実施する。
 (2)亜大陸規模での二酸化炭素吸収評価を目的として、西シベリアのタワーによる二酸化炭素メタン観測ネットワークを展開する。H14年度は4箇所の設置を目指す。また、これと関連して航空機による高度分布の高頻度観測を行う。草原生態系の炭素収支を評価する観測を継続する。太陽光を光源とし地上で二酸化炭素カラム濃度を測定する手法を開発する。
 (3)地域規模の二酸化炭素変動収支の観測研究として、苫小牧・天塩を中心とした森林の二酸化炭素収支の観測、土壌・幹呼吸の自動観測、炭素同位体の変動、遠隔計測によるバイオマス計測、スペクトル画像の航空機・定点観測、スペクトルと樹木の光合成活性との関連などの研究を実施する。
 (4)京都議定書で評価される全炭素アカウンティングシステムに関する研究を継続する。
 (5)北太平洋海域の日加航路で1995−1999年(材木船)と1999−2003年(コンテナ船)に行った大気・海洋二酸化炭素分圧観測データ解析を行う。国際的な観測網の形成を目指して、測定の国際相互検定、観測結果の国際データベース構築を目指す。

課題代表者

井上 元