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日本固有ザリガニの保全遺伝学的研究:ミトコンドリアDNAに基づく遺伝的変異の解明と祖先個体群の特定(平成 17年度)
Phylogeography of endemic Japanese crayfish: investigation of genetic variations and specification of the ancestral population based on mitochondrial DNA analysis

予算区分
AF 奨励
研究課題コード
0405AF520
開始/終了年度
2004~2005年
キーワード(日本語)
絶滅危惧種, 系統地理, 進化的に重要な単位, mtDNA, ニホンザリガニ
キーワード(英語)
Endangered species, Phylogeography, Evolutionary significant unit, mtDNA, Japanese crayfish

研究概要

遺伝子の多様性は、生物多様性の4つの階層構造において重要要素をなす。遺伝的変異の損失は、その種あるいは個体群の絶滅確率を上げるだけでなく、生物が長い時間をかけて獲得してきた進化的遺産を失うことを意味する。遺伝的変異の程度は種によって大きく異なり、一般的に、広域に移動するような種あるいは歴史的(進化的)に新しい種では種内の変異が低く、移動能力が低い種あるいは歴史的に古い種では変異が大きい。生物の保護管理を考える場合、特に後者のような遺伝的変異の大きい種において地域性(地域個体群)を考慮する必要がある。 ザリガニ類は超大陸パンゲアの時代に海産のアカザエビ類から分化したと考えられており、その起源は非常に古い。現在では550種以上ものザリガニが報告されているが、日本在来のザリガニは1種のみであり、また、このニホンザリガニ(Cambaroides japonicus)は日本固有種でもある。こういった起源の古さに加えて、ニホンザリガニは動きが遅く、河川の最上流部に局所的に生息しているため、本種は河川ごとに独自の遺伝的個体群を形成していることが予測される。日本で唯一の貴重なニホンザリガニは、外来種の移入や環境破壊などにより多くの河川で急速に姿を消している。特に、北海道東部の湖沼や河川では、外来ザリガニによる種の置き換わりが次々と報告されている。もしニホンザリガニが各河川において遺伝的に独自の個体群を形成していれば、地域個体群の損失は遺伝的多様性の損失に直結する。本研究では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を用いて、ニホンザリガニの、1)遺伝的変異を定量的に評価し、2)進化的背景(過去の分断、分散経路など)を明らかにする。これらに基づいて、3)進化的に重要な単位ESU(Evolutionary Significant Unit)を設定し、保護管理のガイドラインとなる基礎資料を提供する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

平成16年度:1)ミトコンドリアDNAマーカーの確立、2)個体群内・個体群間遺伝的多様性の把握、3)本調査サンプリングデザインの決定;平成17年度:1)系統地理学的解析−祖先型個体群、分散経路の推定、2)ESUの設定

今年度の研究概要

前年度の予備調査をもとに、ニホンザリガニの全分布域(北海道、青森県、秋田県)をカバーする網羅的なサンプリングを行ない、最終的に、69河川(支流)において562個体のmtDNAを解析した。

備考

小泉逸郎(University of Helsinki, Finland),川井唯史(北海道原子力環境センター),増田隆一(北海道大学)

課題代表者

西川 潮