ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

河川における絶滅危惧ザリガニの機能的役割:地域間ならびに地域個体群間比較(平成 19年度)
Functional roles of endangered crayfish in streams: inter-regional and populational comparisons

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0607CD572
開始/終了年度
2006~2007年
キーワード(日本語)
キーストーン種,ニホンザリガニ,機能的役割,遺伝的変異
キーワード(英語)
KEYSTONE SPECIES, JAPANESE CRAYFISH, FUNCTIONAL ROLES, GENETIC VARIABILITY

研究概要

ニホンザリガニ(Cambaroides japonicus)は、日本唯一の在来ザリガニ種かつ固有種で、近年、外来種の移入や環境破壊などの影響を受けて急速に個体群が消失している(環境省RDB絶滅危惧?類)。特に北海道東部では外来ザリガニ(Pacifastacus leniusculus)による置き換わりが報告されており、釧路川流域では、残されたニホンザリガニ個体群はごく僅かである。しかしながら、これまで、ニホンザリガニの生態的役割はほとんど明らかにされていない。これまでの代表者らの系統地理学的研究によると、ニホンザリガニは5つの明瞭な地理的グループに分かれることが明らかとなっている。本研究は、このうち祖先型個体群と道東個体群を対象として、地理的グループ間の遺伝的特性と環境の違いによってニホンザリガニの機能的役割がどのように異なるかを明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成18年度は、遺伝子配列(16SミトコンドリアDNA)が明瞭に異なるニホンザリガニ地域個体群(積丹グループvs.道東グループ)を対象として自然実験を行う。地域(環境)やニホンザリガニの個体群によって、河川食物網の維持形成における役割や破砕分解者としての役割が異なるかどうかを明らかにする。平成19年度は、積丹半島と道東にて短期間のザリガニ排除実験を行い、生態系プロセスや他生物の応答を調べる。また、積丹グループと道東グループを同一の環境下(人工河川)に移植し、個体群間の遺伝特性の違いによる機能的役割の違いを明らかにする。これらの実験を通じて、表現形の可塑性と遺伝的変異の関係からニホンザリガニの機能的役割を明らかにする。

今年度の研究概要

1.自然実験および環境要因の地域間比較
北海道東部と中央部の各地域において、ニホンザリガニが生息する河川と生息しない河川を3〜4河川ずつ選定する。各河川において、葉の落下量、落葉ならびに微細有機物の流出入量、落葉や有機物の現存量、底生動物を採集する。物理環境要因として、水温、流速、底質組成を記録する。落葉流出入・現存量、微細有機物流出入・現存量、および底生動物現存量を、ザリガニの生息する河川と生息しない河川間ならびに地域間で比較する。
2.ニホンザリガニ個体群の生態的性質の地域間比較
標識採捕法を用いてニホンザリガニの密度推定を行い、各河川におけるニホンザリガニの性比と体サイズ組成を明らかにする。次に、ニホンザリガニにラジオタグを装着して、短期間の行動範囲と移動距離を追跡する。
ニホンザリガニの生息する河川で採集したサンプルをもとに安定同位体解析を行い、炭素の安定同位体比と窒素の安定同位体比からニホンザリガニのエネルギー源と栄養段階(trophic level)を明らかにする。

関連する研究課題
  • 0 : 環境リスク研究センターにおける研究活動

課題代表者

西川 潮