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海底下メタンハイドレート湧出現象と気候変動との関連性解明に関する研究(平成 19年度)
Methane hydrate instability under the sea floor associated with past climate change and its mechanism

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0607CD960
開始/終了年度
2006~2007年
キーワード(日本語)
メタンハイドレート,気候変動,温暖化,放射性炭素
キーワード(英語)
methane hydrate, climate change, global warming, radiocarbon

研究概要

ハイドレートの溶解により放出されたメタンが海底泥表層や海水中で細菌(メタン酸化細菌)に分解された場合、ハイドレート由来メタンの痕跡がメタン酸化細菌のバイオマーカーに記録されると考えられるが、それを明らかにすることは難しい。なぜなら既存のバイオマーカー測定方法では、バイオマーカーの記録が、過去のハイドレートのものなのか、現在堆積物内で二次的に生成されたものなのか判別できないためである。申請者らは、バイオマーカーによる過去の記録解釈をより正確にするため、有孔虫の炭素同位体比異常が見つかっている堆積物コア、メタンシープなどの表層堆積物を用い、堆積物中のバイオマーカー分析の他、堆積物ならびに海底直上海水中に棲息する細菌群集構造とそれらの細菌に純粋に由来するバイオマーカーのindexを同時に作成することでバイオマーカーのプロファイリングを可能にする手法の確立を目指す。さらに疑似メタン放出環境下での浮遊性有孔虫の培養実験から、有孔虫の炭酸カルシウム骨格の炭素同位体比異常とメタン放出量の関係についての経験式を求め、実際の堆積物コアに保存された有孔虫異常に影響を与えたメタン放出現象を定量的に評価する手法を開発する。これらの成果を利用すれば、将来、高分解能海洋堆積物コアを用いた過去のメタンハイドレート湧出に関するイベント発見が可能となり、さらに放出されたメタン量の見積もりから、自然レベルの環境変動で失われたメタン量の推定も可能となることから、環境影響評価研究の為の重要な知見の提供につながる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

無機地球化学的検討(同位体異常有孔虫の炭酸塩の続成影響の検討)
 堆積物コアから回収された有孔虫試料ならびに飼育有孔虫の炭酸カルシウム骨格について、自生炭酸塩なのかそれとも初生的なものなのかどう調べる。骨格の表層から段階的に溶解させることにより、段階的に溶解させて発生した二酸化炭素を回収し、それらについて炭素安定同位体比並びに放射性炭素の分析を行い、自生・初生なのかどうか定量的に見積もる。さらにMg/Caなどの重金属についても分析を行い、続成過程による二次的な影響を有孔虫が受けているのかどうか検討を行う。
有機地球化学的検討(新規のバイオマーカーの探索とその利用方法の検討)
 堆積物の有機炭素含有量・堆積速度・一連のバイオマーカー組成(ホパノイド化合物、エーテル脂質、リン脂質、脂肪酸等)について解析を行い、堆積物有機物の基礎的な情報を得る。さらに、これらのバイオマーカーについて、分子レベル安定・放射性炭素同位体比分析を進める。これらの結果は、培養された菌のバイオマーカーの組成分析の結果と比較することにより、実際の堆積物から抽出されたバイオマーカーの炭素源について明らかにする。さらに堆積物試料からされるintactリン脂質の解析に用いるための基礎資料となる。抽出されたリン脂質については、バルクでの炭素安定・放射性炭素同位体分析を行い、上記の一連のバイオマーカーの同位体比の結果と比較することにより、バイオマーカー間の炭素フローを調べる。さらに抽出されたintactリン脂質は、加水分解を行い、リン脂質のコアについているhead groupの脂肪酸などについて解析を行い、実際に堆積物中に存在している微生物バイオマーカーとすでに長期間堆積物中に存在していたであろう脂肪酸等のバイオマーカーとの有意性について明らかにする。

今年度の研究概要

十勝沖堆積物コアについて、有機炭素含有量・堆積速度・一連のバイオマーカー組成(ホパノイド化合物、エーテル脂質、リン脂質、脂肪酸等)について分析を行い、堆積物有機物に関しての分子情報を得た。さらに、これらのバイオマーカーについて、分子レベル安定・放射性炭素同位体比分析のための前処理方法の検討を行った。これらの結果は、培養された菌のバイオマーカーの組成分析の結果と比較することにより、実際の堆積物から抽出されたバイオマーカーの炭素源について明らかにする。さらに堆積物試料からされるintactリン脂質の解析に用いるための基礎資料となる。

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動(化学環境研究領域)

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    動態化学研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
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