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流下栄養塩組成の人為的変化による東アジア縁辺海域の生態系変質の評価研究(平成 19年度)
Study on the ecological deterioration of the east Asian marginal seas due to anthropogenic change in the ratio of effluent nutrients

予算区分
BA 環境-地球推進
研究課題コード
0608BA934
開始/終了年度
2006~2008年
キーワード(日本語)
シリカ欠損仮説,アジア縁辺海,栄養塩,河川流入,クラゲ,ケイ藻/非ケイ藻比
キーワード(英語)
SILICA DEFICIENCY HYPOTHESIS, ASIAN MARGINAL SEAS, NUTRIENTS, RIVER DISCHARGE, JELLY FISH, DIATOM/NON-DIATOM RATIO

研究概要

アジア海域では有害赤潮やエチゼンクラゲが増大するなどの生態系変質が起こっている。原因としてまず考えられるのが富栄養化海域の拡大であるが、特に陸から流下する栄養塩の組成比の変化も重要である。すなわち、人口×消費の増大により窒素(N),リン(P)の水域負荷が増し、自然の風化溶出で補給されるケイ素(Si、シリカとも呼称)が大ダム湖で保留されてしまうため、海域のN:P:Siが変化し、このためケイ藻類(Siを殻材として必要とし、正常な海洋生態系の基盤となる)よりも渦鞭毛藻(Siを必要とせず、有害赤潮種を含む)などの非ケイ藻類が有利になったことが考えられる(シリカ欠損仮説)。さらに、ケイ藻が春季大増殖の際にN, P, CO2などの溶存物質を効率よく下層に引きおろす(生物ポンプ機能)のに対し、非ケイ藻類はその機能が弱いため、上層に溶存物質が残留しやすくなる。それらが夏季の食物連鎖を肥大化させ、これがクラゲの増大につながっていることが考えられる。本研究課題では「シリカ欠損仮説」をキーワードとして、これらの変化がどのように進行してきたかを、a.アイアンゲートダム-ドナウ川-黒海、b.断流が頻発している黄河-黄海、c.三峡ダム-長江-東シナ海、d.琵琶湖-淀川-瀬戸内海の4水系を対象として比較検証する。そのために、新規取得データおよび既存データに基づいて生態系変質のモデルを作成し解明する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

本課題は、国立環境研究所、水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所および広島大学が、それぞれ(1)N, P, Si流下比変化による海洋生態系変質の総合解析、(2)漁業生態系モデルに基づいたN, P, Si組成比の海洋高次生態系への影響評価および(3)年代間データ比較に基づいたN, P, Si組成比の海洋低次生態系への影響評価の各サブテーマを分担実行する。
2006年度は、それぞれ(1)生態系モデルの基礎作成およびデータ収集、(2)クラゲの食性調査・実験および漁業生態系モデル解析の基礎作成、(3)東シナ海を対象とした年代間データ収集・解析を行う。
2007年度は、各サブテーマでそれぞれ前年度の実行項目を発展させる。
2008年度は、黒海、黄海、東シナ海、瀬戸内海の生態系変質の共通点と相違点の総合的解析により、流下栄養塩組成の海洋生態系影響に関する知見をとりまとめる。

今年度の研究概要

前年度基礎を構築したモデルを発展させ、鉛直方向に2ボックスとして成層・鉛直混合の効果を考慮する。さらに、クラゲなど高次生態系項目を取り入れて、モデル出力が個々の設定条件やパラメータにどのように依存するかの感度解析を行う。また、瀬戸内海のフェリー船舶により栄養塩および微生物ループ関連物質のサンプリング・分析を行う。また、円石藻の海域・季節ごとの出現確率を1980年代のCZCS衛星データにより調べ、前年度行った1990年代の状況との比較を行う。

関連する研究課題
  • 0 : 水土壌圏環境研究領域P

課題代表者

原島 省