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水土壌圏環境研究領域における研究活動(平成 20年度)
Research Activities of the Water and Soil Environment Division

研究課題コード
0610FP016
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
水界生態系,閉鎖性水域,富栄養化,重金属汚染,排水処理,流域
キーワード(英語)
AQUATIC ECOSYSTEM, ENCLOSED WATER AREA, EUTROPHICATION, HEAVY METAL POLLUTION, WASTEWATER TREATMENT, WATERSHED

研究の性格

  • 主たるもの:-
  • 従たるもの:

全体計画

流域を構成する河川・湖沼・海域・地下水などの水圏及び土壌圏について、水の循環やそれに伴う栄養塩・有機物などの循環の解明、また、水圏・土壌圏における汚染防止対策を主な研究対象とする。広域海洋汚染といった地球環境問題や、湖沼・海域で見られる富栄養化、さらに近年特に深刻化している土壌汚染などの地域環境問題について、観測、現象解明、予測等の基礎研究を実施する。水質環境管理上、現在問題となっている事項について課題を整理し科学技術的に解明することで、今後の管理手法改善を目指す。さらに、劣化した環境を修復するために、有機性廃棄物・低濃度排水の管理とエネルギー化技術、沿岸環境修復技術などの開発及び環境修復技術の評価手法を開発する。環境修復技術開発は、重点研究プログラム(アジア自然共生研究プログラム、循環型社会研究プログラム)と連携して実施する。水環境質研究室では、陸水・地下水の化学物質や金属等による汚染実態を把握し、水系生態系での物質循環を物理・化学・微生物学的な見地から定量的に解析する。さらに水環境保全の観点から、新たな排水処理・土壌浄化システムの開発や、地下水汚染対策技術の影響評価手法に関する研究を行う。湖沼環境研究室では、長期的なモニタリングにより湖沼の水質や生態系の変動を把握し、特に有機物による汚濁機構を解明する。有機炭素ベースの湖沼流域モデル開発と検証、有機物組成と反応性の関係解明、湖沼の有機物指標の見直し、浄水・下水処理の適正化等を通し、湖沼環境保全施策の方向性を示す。海洋環境研究室では、日本をとりまく広域海洋及び閉鎖性海域について、その環境汚染および生態系変質の進行状況の評価と機構解明を行う。特に、陸域から流入する各栄養塩負荷・組成の変化による有害微細藻類の増加、浅海域の自然浄化機能の喪失、汚染物質流入による生態系影響とその軽減手法に関する研究を行う。土壌環境研究室では、鉛、レアメタル等の金属汚染や都市域における土壌汚染実態、及び土壌圏における物質循環を、物理・化学・微生物学的な観点から把握し、流域(森林・土壌・水循環)モデル開発、汚染物質の土壌動態パラメータの整備、汚染対策技術の影響評価、慢性的土壌劣化等に関する研究を行う。

今年度の研究概要

経常研究費で実施する研究課題に加え、3課題の特別研究、2課題の奨励研究、地球環境研究総合推進費による1課題の研究、2課題の産業技術研究助成による研究、地球環境保全等試験研究費(公害一括)による1課題の研究、環境技術開発等推進費による2課題の研究、科学技術振興調整費による1課題の研究、科学研究費補助金による3課題の研究を実施する。特別研究「貧酸素水塊の形成機構と生物への影響に関する研究」では、昨年度に引き続き東京湾を対象として、プランクトン由来の有機物と陸起源の有機物による貧酸素水塊形成への寄与の把握、底泥における酸素消費速度の時空間分布特性の把握、貧酸素による底生生物生息環境への影響評価、流動・生態系モデルに基づく貧酸素水塊形成過程の解析を行う。本年度開始の特別研究「湖沼における有機物の循環と微生物生態系との相互作用に関する研究」では、湖沼において有機物と微生物生態系(バクテリア)等の相互作用を評価するため、長期モニタリングデータ(組成,分子サイズ,同位体比等)解析から,湖沼流域における有機物の循環とDOMの難分解性化メカニズムを明らかにする。また、流域河川流出モデルと生態系を考慮した湖内3次元モデルを組み合わせて,湖内の特定地点において,流域の個々の特定発生源や湖水域毎の内部生産源からの寄与を定量的に算定する。重点研究プログラムのアジア自然共生研究プログラムの関連プロジェクトとして位置付けられる特別研究「省エネルギー型水・炭素循環処理システムの開発」では、生物膜利用型のメタン発酵排水処理装置の運転を継続し、低濃度実産業排水への適用可能性評価を行う。また、低温条件に適合したメタン発酵生物膜の生態学的特性や微生物学的構造に関する知見の収集を継続的に行い、低濃度排水の無加温運転を安定的に行うための基礎知見を得る。都市下水処理実証試験を継続的に行い、提案する省・創エネルギー型処理法の省エネルギー効果の試算を行う。地球環境研究総合推進費による課題「流下栄養塩組成の人為的変化による東アジア縁辺海域の生態系変質の評価研究」では、前2年度間に構築したモデルを、瀬戸内海域、長江河口域などに適用し、シリカおよび無機懸濁粒子(シルトおよび粘土鉱物)の流下がダムによって妨げられ、これによって河口・沿岸・縁辺海域の生態系が変質する過程を検証する。さらに、この研究期間中に行われた瀬戸内海のフェリー利用観測の他に、1991年より蓄積されたアジア縁辺海域のコンテナ船利用観測による植物プランクトンデータ、衛星データおよび共同研究機関で得られた知見を総合化し、人為影響による海洋生態系変質の評価を行う。

課題代表者

木幡 邦男