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大気エアロゾル中炭素成分測定の向上とアジアにおける越境大気汚染観測への適用(平成 21年度)
Improvement of measurement method of carbonaceous aerosols and its application to transboundary atmospheric pollution in Asia

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0809CD009
開始/終了年度
2008~2009年
キーワード(日本語)
大気エアロゾル,越境大気汚染,元素状炭素,有機炭素,熱分離・光学補正法
キーワード(英語)
atmospheric aerosol, transboundary atmospheric pollution, elemental carbon, organic carbon, thermal optical method

研究概要

アジアの経済発展に伴う越境大気汚染により,日本を含むアジアの大気環境の悪化が顕在化している.汚染物質として大気エアロゾル中の炭素成分があげられるが,その測定法には様々な課題が残されており,汚染を的確に評価しうる濃度測定を行なうためには,測定法の改良が必要である.また,汚染の動態を解明していく上では,炭酸塩炭素や水溶性有機炭素に関する測定法の検討とデータの蓄積も必要である.本研究では,炭素成分の測定法の課題に対する最適解を見い出し,アジアにおける越境大気汚染の動態解明に寄与することを目的とする.

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

熱分離・光学補正法における炭化補正値の妥当性や適用範囲を実験的に検証する.
試料のサンプリングにおける石英繊維フィルターの正のアーティファクトを極力小さくするための前処理法やブランク制御法を確立する.
黄砂飛来時の試料に対して,OC, EC, CCを適切に区別して分析するためのサンプリング条件や試料処理法・分析条件を検討し,黄砂粒子と汚染物質(OC, EC)の混合の様子を観測する.
WSOCと熱分解OCとの関連性を調べ,熱分解OCがWSOCの指標となりうるか明らかにするとともに,越境汚染によるWSOCの挙動を観測する.

今年度の研究概要

(1) 熱分離・光学補正法により得られる,フィルター上の単位面積当たりのEC量と炭化補正値,そのときの反射光強度あるいは透過光強度の変化,などの分析データを解析し,炭化補正値の妥当性や適切なサンプリング条件を検証する.また,フィルターの内部に吸着したガス状有機物の炭化が透過光による補正にどの程度影響を与えているか,テフロンフィルターやデニューダーを組み合わせることで実験的に検証する.
(2) 石英繊維フィルターの正のアーティファクトを極力小さくするため,加熱処理や真空処理などの前処理法やブランク制御法を検討する.また,一旦ブランクを除去したフィルターについて,再びブランクを増加させないよう適切なフィルターの保管条件についても検討する.
(3) 黄土・黄砂エアロゾル標準物質,および既存の黄砂飛来時の大気試料を使って,OC, EC, CC を適切に区別して分析するための試料処理法・分析条件を検討する.
(4) 既存の大気試料を使ってWSOC を分析して炭化補正値(熱分解OC 量)とWSOC 量との関係を調べ,炭化補正値からWSOC 量を推定できるかどうか検討する.
(5) 前年度後半から開始した沖縄辺戸観測ステーションにおけるフィールドサンプリングを継続する.これによって得られた試料を,上述した検討結果を反映させて分析し,OC, EC の濃度や比率,黄砂粒子とOC,EC の混合の様子や,越境汚染によるWSOCの挙動を考察する.

課題代表者

長谷川 就一