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成層圏突然昇温現象が熱帯対流圏に及ぼす影響(平成 21年度)
Impact of Stratospheric Sudden Warming on the tropical troposphere

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0809CD006
開始/終了年度
2008~2009年
キーワード(日本語)
気候,成層圏突然昇温,熱帯対流圏界面遷移層,巻雲,水蒸気,成層圏対流圏間物質交換,大気大循環
キーワード(英語)
climate, stratospheric sudden warming, tropical tropoause layer, cirrus cloud, water vapor, stratosphere-troposphere exchange, atmospheric gerenal circulation

研究概要

近年データが蓄積されてきた高精度の衛星観測データを用いて、両半球極域の冬季から春季に発生する成層圏突然昇温現象による、熱帯域の (1) 積雲対流の励起 (発生・発達) メカニズム、(2) 対流圏界面付近の水蒸気と巻雲の変動メカニズム、及び (3) 成層圏-対流圏間の物質交換過程を解明することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成20年度では、複数の人工衛星の観測から水蒸気と巻雲のデータセットを作成する。同時に、格子化された気象要素の全球データ (客観解析データ等) を用いて、突然昇温時の下部対流圏から下部成層圏の気象場の特徴を抑えることで、積雲対流が励起される (発生・発達する) メカニズムを明らかにする。
平成21年度では、前年度に作成した衛星観測データセットを用いて、南北両半球それぞれについて成層圏突然昇温現象時の熱帯対流圏界面付近 (主にTTL 内) の水蒸気と巻雲の時空間変動の特徴をまとめる。また水蒸気や巻雲、風、気温の変動から成層圏と対流圏間の物質交換 (STE) 過程を解明する。

今年度の研究概要

(1) 前年度の結果から、SSW 前後で陸域と海上で積雲対流の特徴が異なることがわかった。陸域の積雲は海洋上に比べ空間スケールが小さく、海洋上よりも雲頂が数 km 高高度に達していた。本年度は特に陸域での積雲対流励起過程と上部対流圏の水蒸気と巻雲への影響を詳しく調べる。積雲対流の指標を前年度は OLR (外向き赤外放射量;熱帯では背の高い雲の有無) を用いたが、本年度は衛星搭載レーダー (CloudSat) データを用いることで、積雲の雲頂高度等を明らかにする。水蒸気データは全球規模でかつ鉛直分解能の良い EOS MLS の水蒸気プロダクトを用いる。また巻雲は CALIPSO の雲層データから導出する。
(2) 初期解析の結果、熱帯対流圏界面付近の水蒸気量は 2006、2007 年で大きく異なっていた。2006、2007 年はそれぞれエルニーニョ、ラニーニャ年であったため、ENSO による気象場さらに巻雲発生過程の違いが水蒸気場へ影響を与えていたと考えられる。その影響を詳しく調べるとともに、SSW 時の成層圏循環場 (熱帯下部成層圏での上昇流の強度など)、積雲対流活動の活発領域の違いによる成層圏への水蒸気の流入過程を、客観解析データや大循環モデルの風場を用いて明らかにする。
(3) 2009年冬季に北極域で大規模な SSW が発生した。規模が大きいことで SSW の熱帯大気への影響をより捉え易くなる可能性が高いため、2009 年の北半球 SSW に関して、熱帯大気 (積雲対流活動、巻雲) への影響を調べる。また南半球 SSW との比較解析で、南北間の成層圏循環場の強さの違いが熱帯大気 (特に熱帯下部成層圏から対流圏界面領域の上昇流) にどう影響を与えるかを議論する。

関連する研究課題
  • 0 : 地球環境研究センターにおける研究活動

課題代表者

江口 菜穂