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高窒素負荷を受ける森林集水域の林内環境が窒素流出抑制に及ぼす影響(平成 21年度)
Effect of forest environment on nitrogen runoff control in the highly nitrogen loaded mountainous area

予算区分
AF 奨励
研究課題コード
0809AF001
開始/終了年度
2008~2009年
キーワード(日本語)
森林生態系,窒素飽和,面源負荷,降雨時流出,筑波山
キーワード(英語)
Forest ecosystem, Nitrogen saturation, Nonpoint source pollution, Episodic runoff, Mount Tsukuba

研究概要

首都圏周縁部山地域では、森林域の窒素飽和現象が顕在化している。降水による高窒素負荷に加え、森林(主に人工林)の荒廃が窒素飽和を促し、結果、窒素負荷流出量の増加をもたらすと推察されるが、この関係性について定量的に取り組んだ研究の報告は無い。そこで、高窒素負荷を受けている筑波山において、林内環境の異なる2つの森林集水域での窒素流出特性を比較し、両者の関係性を明らかとする。研究目標は、適切な森林管理に基づく林内環境の改善による、窒素流出抑制への寄与の有無を定量的に示すことである。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

調査対象である筑波山での予備調査では、大気降下物由来とする窒素負荷が全域に亘って非常に高いこと、一方、平水時の渓流水中の窒素濃度は、各集水域で大きく異なる現象が確認された。各集水域の現地踏査や森林施業記録を踏まえ、「対象地の優占林である人工林の林内環境(林木の混み具合や下層植生状態)ならびに土壌環境が、集水域の窒素利用(植物の吸収や土壌微生物の資化)に影響を与えている」ことが、上記現象の主要因であると仮定し、林内環境の大きく異なる2つの集水域を対象に、以下の調査解析を実施し、本仮説を検証する。これにより、森林(人工林)における林内環境の健全化が、窒素流出の抑制、窒素飽和の改善をもたらす可能性を明らかとする。
●大気降下物由来の窒素負荷量と降雨流出時を含めた流出負荷量の継続調査による、集水域単位での窒素収支の算定。(全期間)
●観測データを用いた発生源解析や流出成分分離法等の流出解析による、各集水域の窒素流出特性の解明(2年目)
●植生調査等の実施による、林内環境(仮説中の影響因子)の定量的評価。(1年目)
●物理的および化学的特性、土壌微生物による無機化特性や硝化特性の測定による、土壌環境(仮説中の影響因子)の定量的評価および林内環境との関係性の検討。(2年目)
●土壌水分と土壌間隙水中窒素濃度の鉛直分布測定に基づいた、根圏域での窒素動態解明と林内環境と集水域の窒素保持能の関係性の検討。(全期間)

今年度の研究概要

(1)窒素動態に係る土壌環境調査
前年度林内環境調査を実施した各地点を対象に、窒素負荷量と土壌窒素蓄積量の把握と表層土
壌における窒素動態の評価を行う。これらの結果と林内環境定量結果の関係性を検討し、林内
環境の悪化に伴う林床の有機物層の発達状況やその化学性(特にC/N比)の変化が土壌からの
窒素溶脱(流出)の促進に及ぼす影響度合いを明らかとすることで、本研究仮説の妥当性を検
証する。
(2)流出解析手法を用いた窒素発生源、流出特性の解明
林内環境及び土壌環境調査結果を踏まえ、水文・水質観測データを用いたEMMA(End-Member
Mixing Analysis)法や水質トレーサーによる流出成分分離法を用いた流出解析を行い、出水
時の窒素濃度上昇に対する場所(発生源)と時間(流出経路)の影響を集水域間で比較するこ
とにより、集水域単位での窒素流出量を抑制する機構を解明する。
(3)窒素収支調査
・集水域単位の窒素流出負荷量を、降雨流出時の連続観測を含めた渓流水量・水質の2年間の
観測結果から、L−Q式等を用いて算定する。
・同じく流入負荷量を、詳細な植生分布図(高解像度衛星データを基に作成予定)と主な樹種
毎の林内雨負荷量調査結果から算定する。
以上から、各集水域における窒素年収支を求め、窒素飽和の進行状態や窒素負荷
発生源としての現状を明らかとする。

関連する研究課題
  • 0 : 領域プロジェクト

課題代表者

林 誠二

  • 福島地域協働研究拠点
  • 研究グループ長
  • 博士(工学)
  • 土木工学,林学
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担当者