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脱温暖化社会の実現に向けたビジョンの構築と対策の統合評価(平成 21年度)
Developing visions for a low carbon society and integrated analysis of climate policies

予算区分
AA 中核研究
研究課題コード
0610AA104
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
脱温暖化,国際政策,政策評価,シナリオ,低炭素社会
キーワード(英語)
CLIMATE STABILIZATION, INTERNATIONAL POLICY, POLICY ANALYSIS, SCENARIO, LOW CARBON SOCIETY

研究概要

地球温暖化問題は、社会経済活動と密接な関係があり、地球温暖化問題を解決するためには、科学的なメカニズムを明らかにすることとともに、将来の社会経済のあり方を含めた議論(社会構造そのものを温暖化防止に資するものに転換する「脱温暖化社会」の構築に向けた議論)が重要となる。また、温暖化対策の目標の設定や枠組を明らかにし、その効果を評価することは、温暖化対策を効率的かつ効果的に実施する上で必要不可欠である。
本研究課題では、脱温暖化社会のビジョンやその構築に向けたシナリオの検討、国際交渉の枠組、さらにはこれらの評価を定量的に行うためのモデル開発やモデルの適用を通じて、温暖化を防止する社会の構築やそれを支える温暖化政策を支援することを目的とする。また、モデル開発及び政策分析では、途上国との共同作業を通じた人材育成を行うことで、アジアを中心とした途上国における温暖化対策の促進に貢献することも目的とする。
温暖化研究プログラムにおいては、中核1,2との共同作業により温室効果ガス排出インベントリの検証を行う。また、排出経路や安定化濃度を中核3と共有することで、温暖化影響をフィードバックした対策の評価を整合的に分析する。これらの研究を通じてIPCC等への国際貢献を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成18年度においては、(1)2050年の脱温暖化社会の定量化と他国の脱温暖化シナリオとの連携方法の検討開始、(2)炭素市場メカニズム等、京都議定書の下で発足した各種制度の評価、問題点の整理、(3)日本を対象とした温暖化対策の費用・効果分析、温暖化対策と他の環境問題の統合施策の定量的評価を行う。

平成19年度においては、(1)2050年の脱温暖化社会に向けた実現可能な発展経路の同定、アジア主要国のビジョン検討枠組の構築の開始、他国の脱温暖化シナリオとの連携の拡大、(2)炭素市場メカニズム等、京都議定書の下で発足した各種制度の問題点の整理と改善策の提示、(3)アジア主要国を対象とした温暖化対策技術の移転の効果分析(削減ポテンシャルの評価)と長期の温暖化対策と短期の適応策の統合評価を行う。

平成20年度においては、(1)中長期および短期環境政策への具体的提言アジア主要国のビジョン構築の進展(各国の実情に合わせたモデル適用)、他国の脱温暖化シナリオとの連携による政策提言、(2)京都議定書以降の国際的取り組みに関する改善策の提示(批准等で数年かかることから、2013年から次期制度を開始するためには2008年までに合意することが必要と考えられている)、(3)アジア主要国を対象とした温暖化対策と他の環境問題の統合評価を行う。

平成21年度においては、(1)他の環境問題との関係を考慮した中長期および短期環境政策への具体的提言、(2)途上国や米国を含んだ全ての国が参加する長期的取り組みのあり方に関する具体的提言に関する検討、(3)国際的な枠組での温暖化対策の効果、費用に関する定量分析を行う。

平成22年度においては、(1)日本・アジア・世界における脱温暖化社会ビジョン・シナリオ研究の方策・適用・政策提言の総まとめ、(2)途上国や米国を含んだ全ての国が参加する長期的取り組みのあり方に関する具体的提言、(3)日本及びアジアを中心とした温暖化対策を中心とした環境・経済政策の効果に関する定量的評価を行う。

今年度の研究概要

低炭素社会づくりを世界に広げるために必要とされる持続的発展などの低炭素以外の要素を考慮するため、低炭素社会と持続的発展の施策のシナジーあるいはトレードオフを分析し、低炭素政策が持続的発展に与える影響について検討する。また、アジア主要国の低炭素社会の実現に向けた政策提言のため、アジア各国の研究者と共同して2050年におけるアジア低炭素社会の叙述シナリオを作成する。特に、社会特定化に必要な要素であるエネルギー・土地利用問題、社会インフラの整備と制限制約、低炭素化に向けた障害とその解決について検討する。さらに、目標に至る道筋を検討するためのバックキャストモデルの改良を行い、アジア地域への適用を図る。低炭素社会研究ネットワーク(LCS-RNet)を通じて世界の低炭素社会シナリオ構築に貢献する。
 次期国際枠組みに関する交渉は2009年末に開催予定のCOP15での合意が目指されているが、短期間に包括的な合意に至るのは困難という見方が強まってきている中で、新政権下での米国や排出量が急増している中国などの新興国等、主要国の態度が注目されている。そこで、これまでに蓄積した制度提案に関する知識を交渉会議等にて発信しつつ、米国、欧州、新興国、ロシアの4大プレーヤーを取り上げ、それらの国の交渉におけるポジションや政策決定の分析を実施する。また、より長期的な視点からは、アジア太平洋地域における低炭素社会あるいは持続可能な発展に至るための道筋を検討するために、同地域の多様な国際協力機関の連携の在り方について検討する。
 これまでに開発してきた国別モデル、世界技術選択モデル、世界経済モデルのデータの更新やモジュールの改良を引き続き行い、わが国や主要国の温暖化対策の実施の効果とその影響を定量的に明らかにし、我が国の温暖化対策に貢献する。改良された世界経済モデルや技術選択モデルを用いて、IPCC新シナリオへの入力を目的とした長期の社会・経済シナリオの作成作業を行う。第5次評価報告書に向けた新シナリオ作成においては、新興国や途上国の参加が不可欠である。そのため、本プロジェクトで開発してきた統合評価モデルを提供し、アジア各国の研究者がアジア各国の視点から長期のシナリオを作成できるよう支援するとともに、共同で長期の社会経済発展シナリオを開発する。さらに、世界経済モデルと温暖化影響評価モデルの統合作業を行い、気候変動や温暖化影響とその社会・経済へのフィードバックについて検討する。

課題代表者

甲斐沼 美紀子

担当者