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有害化学物質の生態系影響評価:動物プランクトンへの群集レベル効果の解明(平成 21年度)
Role of biological interactions in structuring zooplankton community and disturbance by anthropogenic toxic chemicals on them

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0912CD001
開始/終了年度
2009~2012年
キーワード(日本語)
湖沼,プランクトン群集,化学物質
キーワード(英語)
lake, plankton community, anthropogenic chemicals

研究概要

本研究では「プランクトン群集構造を決定する生物間相互作用の役割とメカニズムを解明し、それを撹乱する人為化学物質の影響を解明すること」を目的としている。具体的には、富栄養湖で優占種となることの多い、2種のゾウミジンコ(Bosmina longirostrisとB. fatalis)と2種の捕食性プランクトン(ケンミジンコとノロ)の4者間での捕食・競争関係を明らかにすると共に、それらの生物間関係を撹乱する殺虫剤の影響を、数理モデルを用いた解析により明らかにすることを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

群集モデルの構築および生態影響評価への応用
我々の先行研究から、プランクトン生物種間で殺虫剤耐性が大きく異なることが示された。さらに、これらの生物に致死影響を与えない、低濃度の殺虫剤が、捕食者によって誘導される枝角類の形態防御を促進(または抑制)させることが明らかになり、殺虫剤が捕食‐被食関係を介して間接的に群集構造に影響を与えることが示された。これらの結果は、環境中に混入した殺虫剤が汚染レベルに依存してプランクトン群集構造を変えることを示唆する。本研究では、以下の)〜)で示すように、単純な系から、より複雑な系へと順に諸要因を制御しながら実験的解析を行う。これらの実験で得られたパラメータから個体群動態モデルを構築し、生態影響評価に応用する。

栄養段階別の群集モデルの構築(諏訪湖) 
)1栄養段階まず、2種のBosminaを用い、それぞれの種の個体群動態モデルを構築する。
)2栄養段階捕食者であるノロ及びケンミジンコの存在下でのBosminaの個体群動態に及ぼす種間競争及び捕食−被食関係の寄与について、室内実験による結果から構築した数理モデルを用いて解析する。
)3栄養段階以上)で得られた個体群変動モデルに、環境収容力を制限する要因となる生産者(植物プランクトン)やより高次の消費者であるプランクトン食魚の影響を加え、その密度を変えた場合に生ずる個体群動態を予測する。最終的にはメソコスム内に、3栄養段階以上からなる実験群集を実際に構築し、個体群変動モデルの有効性を検証する。

霞ヶ浦の動物プランクトン群集モデルの構築
諏訪湖の場合と同様に、1栄養−多栄養段階に順をおって群集モデルを構築していく。霞ヶ浦モデルでは、構成種を小型種(Bosmina)、中型種(Diaphanosoma)、大型種(Daphnia)とし、彼らの餌競争に影響を与える捕食者として、イサザアミとケンミジンコを用いる。

)〜)は同時に殺虫剤・除草剤が存在する処理区を用意した実験を行い、汚染レベルと生態系影響の大きさとの関係を予測する。また、カルバリルは致死影響が観察されないような低濃度でもBosminaの対捕食者形態の誘導を抑制するため、形態変化が抑制される条件下での実験・解析を行うことで、捕食者の存在下での形態防御の重要性を定量的に評価することができる。

今年度の研究概要

[ 対象生物を用いた急性・慢性毒性試験 ]
諏訪湖・霞ヶ浦で観察される実験対象生物である数種の枝角類とその捕食者を用いた急性・慢性毒性試験を殺虫剤(カルバリル、ダイアジノン)と除草剤(シメトリン)で行い、これらの化学物質に対する耐性の比較を行う。

[ 基礎データの蓄積及び個体群動態モデルの構築 ]
室内実験を行い、各湖のミジンコ種の競争関係・個体群変動を制限する要因を明らかにする。
() 個体成長速度および個体群増殖速度の比較を行う(1栄養段階)。
() 捕食者の密度をコントロールした条件で競争実験を行う(2栄養段階でのtop-down effect)。
() 餌である植物プランクトンの質、量を変えて実験を行う(2栄養段階でのbottom-up effect)。
[()〜()はカルバリルやダイアジノンによって捕食者‐被食者間の相互作用が撹乱された条件でも同時に実験を行う。]

関連する研究課題
  • 0 : 環境リスク研究センターにおける研究活動

課題代表者

坂本 正樹