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東アジア広域輸送大気エアロゾル中バイオマス燃焼起源ブラックカーボンの時間変動(平成 22年度)
Black carbon

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0910CD009
開始/終了年度
2009~2010年
キーワード(日本語)
放射性炭素,ブラックカーボン,東アジア,遠距離輸送,PM2.5エアロゾル
キーワード(英語)
radiocarbon, blackcarbon, East Asia, long transport, PM2.5aerosol

研究概要

本研究の目的は、東アジア広域越境汚染の下流域にあたる長崎県福江島において大気エアロゾル試料(PM2.5)を採取し、燃焼生成炭素系物質であるブラックカーボン(以下、BC)の14C 分析を行い、バイオマス燃焼起源のBCの時空間変動を明らかにすることである。これにより、化石燃料と、バイオマス燃料の燃焼生成物の寄与と相対割合を評価し、中国からの越境大気汚染が我が国へ与える影響を評価することに貢献可能と考えられる。これまで、大気中の燃焼生成粒子の起源推定や動態解析に関する研究は、発生源固有の分子マーカーの開発や、燃焼起源の燃料の違いによる固有の分子組成の探索、分子レベルの安定炭素同位体比に基づいて行われてきた。しかし、主に検出限界の問題と、エアロゾル中のBCの分離に伴う困難さから、炭素の起源を化石燃料 /バイオマス間で明確に区別した研究はほとんどなされてこなかった。本研究によって提案する放射性炭素を用いた起源情報の推定が行えれば、越境汚染バイオマス燃焼起源BCの発生量規模を予測する上での重要なデータとなりうることが期待される。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

H21年度は、長崎県福江島において、エアロゾル資料(PM2.5)を季節ごとにそれぞれ数週間程度の集中サンプリングを実施する。サンプリングは、アンダーセンハイボリウムエアサンプラー(吸引流速566L/分)を用い、24〜48時間のサンプリングタームで14C測定可能な量のブラックカーボンを採集できる見込みである。採取したPM2.5試料よりBCを分離し、BCの放射性炭素測定を実施し、バイオマス燃焼由来炭素系物質の起源を明らかにする。BCの分離は、試料中の炭酸塩を塩酸賛成条件化で除去した後、Air気流下で試料を加熱し375℃で有機物を酸化・除去する方法を用いる。ブラックカーボン分析の最大の障害は、有機物の熱分解除去の過程で、非燃焼由来(=生物由来)有機物が炭化することである。このような「炭化」が起こると、「ブラックカーボン」画分のΔ14C値は「混入」したバイオマス炭素の量に応じて高い値を示すが、本研究では、OC由来の炭化成分の除去が出来ないかどうかの検討を行う。平成22年度は、前年度に実施したエアロゾル試料のサンプリングを継続して行うほか、採取したエアロゾル試料からBCの放射性炭素測定を実施する。得られたデータを解析し、バイオマス燃焼由来炭素系物質の時間変化・動態解析を行う。これらをもとに研究をとりまとめる。

今年度の研究概要

前年度に引き続き、長崎県福江島において、季節ごとにそれぞれ1週間程度の集中的なエアロゾル試料(PM2.5)のサンプリングを継続して行うほか、ブラックカーボンの分離・精製手法を検討しながら、極微量14C分析を行う。また、採取したエアロゾル試料からOC/BCの分離実験を引き続き行う。平成22年度には、得られたデータを解析し、バイオマス燃焼由来炭素系物質の時間変化・動態解析を行う。これらをもとに研究をとりまとめる。
▼極微量AMS14C分析
グラファイト化した有機炭素、ブラックカーボンの14C測定で分離・精製したブラックカーボンを超低バックグラウンドでの極微量炭素のグラファイト調整用に開発した高真空グラファイト反応装置を用いてグラファイト化、これを国立環境研究所現有のペレトロン型加速器質量分析計(AMS:NIES-TERRA)で14C測定を行なう。これまで、申請者は、各種環境試料を対象とした超微量炭素量による高精度14C測定のための前処理について多くのノウハウを有しており、多数の論文を発表している。また本研究を
行うためのマシンタイムは十分に確保されている。またこれまで大気エアロゾルの14C分析に関する様々なノウハウを有していることから、本研究の実施に当たっては威力を発揮する。
▼エアロゾル試料、堆積物試料のバイオマス燃焼由来炭素系物質の分析
手法を用いて、大気エアロゾル試料に含まれるバイオマス燃焼由来炭素系物質の定量分析および同位体組成分析を実施し、化石燃料と、バイオマス燃料の燃焼生成物の寄与と相対割合を明らかにする。

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
    動態化学研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
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