ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

湿原流域の変容の監視手法の確立と生態系修復のための調和的管理手法の開発(平成 22年度)
Develping methods for monitoring system of transfiguration of Kushiro mire and harmonic management on wetland restration

予算区分
BB 環境-地球一括
研究課題コード
0812BB001
開始/終了年度
2008~2012年
キーワード(日本語)
釧路湿原,モニタリング,流域生態系
キーワード(英語)
Kushiro mire, monitoring, watershed ecosystem

研究概要

湿原が一度荒廃すると修復するためには非常に多くの労力を要することから、本研究では、湿原の保全施策を構築するための湿原とその周辺流域における総合的管理手法の開発を目的とする。具体的には(1)湿原生態系の変容を的確に捉え、変容をもたらした原因を明らかにするため、湿原とその周辺流域の自然環境の変容や野生生物等の生息・生育環境の変容を監視する手法を開発する、(2)湿原を含む流域全体の広域な土地利用の変化が湿原に及ぼす影響を明らかにする、(3)湿原周辺の農地から発生する負荷を施肥管理制御、小水路、緩衝域などを活用し低減する手法を開発する、(4)荒廃した湿原植生を積極的に修復、復元する手法を開発する、ことを目標とする。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

1.湿原生態系の自然環境、野生生物の生息・生育域環境の変容の監視手法の開発
1)湿原の生態的変容解析のための調査研究
 釧路湿原内の実地調査やこれまでに実施された各種の調査で得られた自然環境データと衛星画像、空中写真等のリモートセンシングデータを地理情報システム(GIS)を用いて統合的に解析し、生態系の変容を監視する手法を開発する。(1)湿地林環境 湿地林環境の変容については樹林の分布及び更新サイクルについて、これまでの調査データから得られた変動に関する条件を整理し、リモートセンシングデータとリンクさせることが可能な項目を抽出する。これらを統合的に解析し、リモートセンシングによる湿地林環境の変容の様子を明らかにするとともに、実地調査を行いその精度検証を行う。これによりリモートセンシングデータから生態系の変容を監視する手法を開発する。(2)土砂堆積 釧路湿原に流入する土砂堆積物がハンノキ等の生育にどのような影響を及ぼしてきたかを明らかにするために、堆積物の柱状試料を採取し、窒素、リン、炭素量などの物理化学的因子を深度別に定量するとともに、放射性セシウムや放射性鉛を指標として堆積年代を推定する。(3)地下水環境 釧路湿原の地下水環境に関しては、これまでに20数キロ離れた丘陵に起源をもつ地下水流動系の地下水が湿原内に流出すること、湿原周辺の局地的な水理地質を明らかにした。これらを発展させ、地下水流動系の地下水が湿原涵養に対する寄与を明らかにするために、マルチトレーサー(放射性同位体、安定同位体、微量元素、主要イオン等)を指標として釧路湿原における水収支を明らかにする。また、古環境解析をもちいて地下水盆の水理地質構造を解明するとともに、土地利用などの比較により地下水の水質組成の相違・変化を明らかにする。(4)水文気象環境 釧路湿原の水文気象環境については湧水地の融雪期と暖候期の降水に対する水位の応答や湧水及び井戸の水温の安定性及び水質特性について明らかにしてきた。湿原では高等植物やミズゴケ類の枯死物の堆積によって湿原の微地形が生じ、それに応じて多様な湿潤と地温に代表される地表環境が形成され、それらの環境に適応した多様な動植物や水生昆虫の生息が維持されている。そこで、多様な動植物や水生昆虫群集の生息を決定する地表の水文気象環境の変動特性と流域の変容との関係を明確にするため、現地調査及び環境の連続モニタリングによって湿原の環境多様性を明らかにする。
2)絶滅のおそれのある野生生物等の生息域環境に関する調査研究 釧路湿原に生息する野生生物等の生息、生育環境についてこれまでの基礎調査データ、今後実施する実地調査データにより、生育環境の特性を明らかにし、生息域適正モデルを開発する。これに環境のリモートセンシングデータを関連させることにより湿原内の広域における環境変容と生物の応答関係を把握する手法を開発する。(1)タンチョウの営巣環境のモデル化(2)淡水魚(イトウ等)の生息環境のモデル化(3)水生昆虫、無脊椎動物(ザリガニ等)の生息環境のモデル化(4)野生生物(キタサンショウウオ、エゾシカ等)の生息環境のモデル化(5)水生及び湿地植物の生育環境のモデル化

今年度の研究概要

釧路湿原内において多面的な実地調査を行い、湿原の変容に関する環境の特性を明らかにする。釧路湿原内において湧水や地表水の水質(イオン、同位体比など)、放射性セシウム等の濃度ピーク深度、地質構造等を明らかにするために多面的な実地調査を行う。また、既往の調査データから湿原の変容に関する条件の整理を行う。釧路湿原に生息する野生生物等の生息、生育環境について実地調査を行うとともに、これまでの基礎調査データにより生育環境の特性を明らかにする。釧路湿原とその周辺における広域的な環境変化をGIS等の手法を用いて解析するための基礎的なデータを整備する。釧路湿原を含む広域的な流域における土地利用データを衛星画像、空中写真等を用いて作成する。・主要な池とうの水生生物や水質・底質の関係を明らかにし「池とうマップ」のデータベース化を行う。
・赤沼の生物群集を明らかにする。
・底質コアを採取して広範囲な底質の分布を明らかし、更に堆積速度や安定同位体比の変遷を明らかにする。

備考

環境省:独立行政法人国立環境研究所
農林水産省:農林水産技術会議事務局、独立行政法人農業環境技術研究所、
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

関連する研究課題
  • : 重点4ー中核3流域生態系における環境影響評価手法の開発
  • : アジア自然共生研究グループにおける研究活動

課題代表者

野原 精一

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • シニア研究員
  • 理学博士
  • 生物学,理学 ,水産学
portrait

担当者