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シロイヌナズナの自然変異(ナチュラルバリエーション)を用いた環境適応遺伝子による適応的分化に関する研究(平成 23年度)
Identification of genes involved in environmental adaptation in higher plants by using natural variation of Arabidopsis thaliana.

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1111AQ012
開始/終了年度
2011~2011年
キーワード(日本語)
シロイヌナズナ,環境適応,ナチュラルバリエーション
キーワード(英語)
Arabidopsis thaliana, environmental adaptation, natural variation

研究概要

ある植物種の地域個体群は、それが生育する環境の変化を受けて適応することで、徐々に遺伝的な構造が他の地域のものと異なってくる(適応的分化)。植物では、根から吸収された水は、葉の裏側にある気孔から蒸散するため、その開閉制御は植物の乾燥耐性に大きく影響する。また、葉面から蒸散する水は気化熱を奪うことにより葉温を下げる働きがある。このように、陸上植物では、気孔の働きを通して「温度」と「乾燥」に適応しているが、この過程に関与する遺伝子の変化と環境適応を関連づけた研究はほとんど行われていない。本研究では、世界各地に分布するモデル植物シロイヌナズナの複数の異なる生態型を用いて、気孔開閉に関与する遺伝子の構造と機能が、それらの高温・乾燥耐性とどのように対応しているかを比較することで、植物の高温・乾燥に対する適応機構の解明を行う。。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

これまでに異なるオゾン耐性を示すシロイヌナズナCol-0(オゾン耐性)とWs-2(オゾン感受性)に関与する遺伝子を特定するために、これらを掛け合わせた雑種後代系統(通常F7系統を使用)の遺伝子型と形質(ここではオゾン耐性を数値化)を用いて形質に関与する染色体領域を特定した(QTL解析)。その結果、染色体1番にあるAt1g12480(SLAC1遺伝子;気孔の開閉に関与)のプロモーター領域及びAt1g12490のコード領域がWs-2で欠失していることが明らかになった。この研究材料を用いて本研究の目的を達成するため、(1) At1g12480遺伝子と At1g12490遺伝子のどちらが乾燥(オゾン)耐性に関与しているのか、(2)シロイヌナズナ生態型間における乾燥(オゾン)耐性の比較、(3)異なる乾燥(オゾン)耐性を示すシロイヌナズナにおける適応遺伝子の構造・機能解析、を行いこれらの遺伝子が適応遺伝子として機能しているかについての検証を行う。具体的な内容は以下の通りである。
(1) At1g12480とAt1g12490遺伝子の乾燥(オゾン)耐性への関与
・両遺伝子のシロイヌナズナにおける発現解析。
・Col-0における両遺伝子の機能欠失系統の乾燥(オゾン)耐性の解析。
(2) シロイヌナズナ生態型間における乾燥(オゾン)耐性の比較
・200種類以上あるシロイヌナズナ生態型のうち、地理的分布が均等になるように選抜をかけ(約80種類を想定)、種子を入手し、増殖を行う。
・入手したシロイヌナズナの乾燥耐性、オゾン耐性を調べる。
・入手したシロイヌナズナの地理的情報、栽培地の気象条件(降雨量、気温など)を入手する。
(3)シロイヌナズナ生態型間における遺伝子の構造・機能解析
・(2)で選抜したシロイヌナズナにおけるAt1g12480及びAt1g12490遺伝子のゲノム構造を解析する。
・(2)で選抜したシロイヌナズナにおけるAt1g12480及びAt1g12490遺伝子の発現解析を行う。

今年度の研究概要

(1) At1g12480とAt1g12490遺伝子の乾燥(オゾン)耐性への関与
 Col-0を宿主親として両遺伝子の機能を欠失した遺伝子組換え体を作成する。こうして作成された植物体を用いて乾燥(オゾン)耐性をCol-0と比較することにより、これらの遺伝子のうちどちらが乾燥(オゾン)適応遺伝子であるかについて明らかにする。
(2)シロイヌナズナ生態型間における乾燥(オゾン)耐性の比較
 データベース上から200種類のシロイヌナズナ生態型の分布情報を入手し、地理的分布の異なる生態型を選抜し、その種子を入手する。入手した種子は1系統につき通常20粒程度しか手に入らないため播種し、増殖を行う。また地理的情報から各生態型の自生地の降雨量、気温等の情報を入手する。
(3)シロイヌナズナ生態型間における遺伝子の構造・機能解析
 手持ちの20種類のシロイヌナズナ生態型(Col-0とWs-2を含む)についてAt1g12480及びAt1g12490遺伝子のゲノム構造・発現様式を解析する。

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題

課題代表者

玉置 雅紀

  • 生物多様性領域
    環境ストレス機構研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(農学)
  • 生物学,農学,生物工学
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