ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

金属特異性を考慮した包括的な生態リスク評価手法の開発(平成 24年度)
Development of comprehensive ecological risk assessment methods considering metal specificity

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1215CD003
開始/終了年度
2012~2015年
キーワード(日本語)
生態リスク評価,重金属,生物利用可能性
キーワード(英語)
ecological risk assessment, heavy metals, bioavailability

研究概要

金属は水質や土壌に応じて毒性値が変わる等、有機化合物とは異なる特徴を持つ。加えて金属には、自然起源 であるためリスクを完全になくすことはできず、また利用に際しては代替が困難であるという性質もある。欧米 ではこのような金属特異性を考慮した生態リスク評価・管理の枠組みを構築しつつある。一方、わが国にそのような枠組みは存在せず、議論されたことすらほとんどない。金属特異的なリスク評価には、金属毒性予測モデル Biotic Ligand Model (BLM)が用いられる。我が国の土壌は比較的酸性であるし、水質も硬度が低い等、欧米の 土質、水質とは異なる特徴を持つ。また、我が国に固有な生物種の毒性を予測するBLMはほとんどなく、海外で 発展した金属特異的評価の枠組みを直接援用することは困難である。本研究では、わが国の特徴を捉えた科学的 知見に基づくリスク評価手法を確立する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

水生生物リスク評価では、まず国内生物種BLMを開発する。水質の異なる試験水で毒性試験を行い、BLMパラメーターの推定を行う。野外から環境水を採水し、実験室での結果が野外でも成り立つかを確認する。環境水についてはDGT試験により利用可能量の把握を行う。複合毒性については、複合毒性予測BLMを用いて毒性の予測を行い、実験で検証する。土壌生物のリスク評価では、まず代表的な土壌を採取し土壌の性質による類型化を行う。利用可能量との関係をDGT試験で定量し、毒性が顕在化しやすい土壌の性質を特定する。ミミズを用いた毒性試験を行い、利用可能量と体内移行量、生態影響との関係を求める。得られたデータを用いて土壌生物BLMを構築する。最後に結果を統合し、わが国の特徴をとらえたリスク評価を行う。

林岳彦は分担研究者として、以上全体計画における「BLMの開発とパラメータ推定」の部分を担当する。

今年度の研究概要

本年度は土質及び水質に応じた金属の生物利用可能量の把握及び生態毒性との関係の把握を定量化するに資す るデータの蓄積を行う。水性生物のリスク評価については、影響評価として、まずBLM開発が必要な生物種の選定を行う。藻類、甲殻 類については我が国に広く存在しかつ毒性試験が容易な生物を選定する。魚類についてはメダカを用いる。本年は特にBLMのモデルパラメーターを推定するための(主に急性)毒性試験を行う。先行研究を参考にしながら、 カルシウムや金属イオンの「親和係数」を推定するため必要なデータを蓄積する。銅、亜鉛、ニッケルなどこれ までのリスク評価の結果から比較的リスクが高いと懸念されている金属で、毒性試験が容易なものから順次開始 する。また、毒性試験に用いる試験水を用いてDGT試験も併せて行い、利用可能量と毒性値の関係も把握する。 暴露評価では、水質組成の時空間的な変動に起因する生物利用可能量変動の把握の一環として、曝露が顕著な金 属汚染地域や都市河川において水質サンプリング及びDGT試験を行う。水質分析結果とWHAM等のスペシエーショ ンモデルの結果を比較し、金属リスク評価におけるスペシエーションモデルの援用可能性を議論する。

林岳彦は分担研究者として、以上の今年度の全体研究計画のうち、BLMパラメータ推定の観点からの毒性試験デザインの設計を共同で担当し、得られた毒性試験結果からBLMモデルパラメータの推定を行う。

外部との連携

本研究課題は、国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門の加茂将史研究員が研究代表者である、科学研究費補助金基盤研究(A)「金属特異性を考慮した包括的な生態リスク評価手法の開発」の一環として行われる。

関連する研究課題

課題代表者

林 岳彦

  • 社会システム領域
    経済・政策研究室
  • 主幹研究員
  • 理学博士
  • 生物学
portrait