ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

北極海底の大規模氷床削剥痕の形成年代決定とグローバルな気候変動との関連性の解明(平成 24年度)
Relationships between continental Ice sheet retreat events recorded in the Arctic Ocean floor and their global climate changes

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1012CD020
開始/終了年度
2010~2012年
キーワード(日本語)
北極海,氷床,温暖化
キーワード(英語)
Arctic Ocean, ice sheet, global warming

研究概要

ノースウインド海嶺からマカロフ海盆海底に残された巨大氷床の削痕が形成された時期を明らかにし、巨大氷床に埋め尽くされた北極海の環境変動の履歴(特に塩分の変動が中深層循環に与えた影響)について、古海洋復元プロキシー(過去の環境を復元するための代替指標)を駆使することによって明らかにすることを目的とする。本研究のための試料採取は、2010年度海洋研究開発機構調査船「みらい」により実施する(すでに本研究テーマでの研究課題は採択済み)。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

過去の自然レベルで起きた温暖化現象に伴う北極環境変動を復元する研究であり、近年の北極域における温暖化現象のみならず近未来の北極環境変動の予測を行う上でも重要な知見を提供するものといえる。特にMR08航海の海底音波探査調査から得られた大陸氷床由来の大量の氷塊が深さ1000mまで満たしていたことを示唆する解析結果は、北極海海洋循環への多大な影響をもたらしたことが予想される。すなわち、氷塊融解による大量の淡水は、北極海に極度の低塩分化をもたらし、北極海の海洋構造(中深層水循環変動とフラム海峡を通じた深層大循環)に果たした影響は計り知れない。このような状況が、比較的気候が安定だったと言われる過去1万年間(完新世)の北極海洋環境の実態は未解明であり、本研究実施の意義は高いといえる。本研究で実施される氷床崩壊と低塩分化による海洋構造への影響解明は、近未来北極海温暖化による海氷減少、グリーンランド氷床の融解といった環境影響を予測する上でも重要な知見を提供する。最新の古海洋復元プロキシー(過去の環境を復元するための代替指標)を駆使し、過去の急激な気候変動のあった時期の北極海環境変動の復元を行う。

今年度の研究概要

1)氷床削痕形成時期の年代決定(H22〜H24に実施)
 ノースウインド海嶺周辺には、特に東側斜面を中心に多数の氷塊削剥痕が見つかった。それは、水深1000mまでに及んでおり、痕跡の明瞭の度合いから、様々な年代における記録であることが示唆された。本研究では、MR08-04航海で得られた音波探査記録に基づき、それらの削剥痕の谷部、山部においてピストンコアを採取し、削剥が起きた年代を調べる。削剥年代の層準決定には、バルク有機炭素の放射性炭素年代測定を実施する。また正確な層準の年代決定には、浮遊性有孔虫化石を利用する。北極海では、浮遊性有孔虫の保存は著しく悪く、特に氷河期には算出しないことから、申請者が開発している新たな年代プロキシーを利用する。これは、海洋古細菌の細胞膜脂質の放射性炭素年代測定に基づくものでる
2)過去の温暖期(最終間氷期、氷床融解時期(退氷期—完新世前期))における北極海洋循環像の解明
水深1000mにまでにわたり巨大な氷塊に埋め尽くされていたと考えられるカナダ海盆、マカロフ海盆では、どのような海洋構造であったのか、またそのような状態はどのくらいの期間続いたのかなど、堆積物試料に含まれる有孔虫試料の放射性炭素同位体をトレーサーに海洋循環像を明らかにする

課題代表者

内田 昌男

  • 地球システム領域
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,地学,理学
portrait