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生物多様性研究プログラム(平成 25年度)
Biodiversity Research Program

研究課題コード
1115SP050
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
生物多様性,土地利用,遠隔計測,遺伝子判別,分布推定モデル,外来生物,遺伝子組換え生物,地球温暖化
キーワード(英語)
biodiversity, land use, remote sensing, genotyping, predictive distribution model, alien species, GMO, global warming

研究概要

生物多様性の効果的な保全を進め、生物多様性条約の愛知ターゲットを達成するためには、生物多様性の現状の把握と、保全策の効果を予測・評価する手法の開発が不可欠である。また、生物多様性への直接的な脅威への対策を立案するにはその実態の解明と将来の予測が必要となる。これらの目標にむけた科学的なアプローチは国内外で進められているが、多種多様な生物と生態系の総体である生物多様性の各側面を統合して総合的に評価・予測する手法はいまだ確立していない。本研究プログラムでは、生物多様性の現状を把握するためのデータ取得手法に関する研究、集積されたデータを総合的に解析して評価し、保全に反映させる手法に関する研究、および喫緊の対応が必要とされている外来生物等および気候変動の生物多様性への影響評価と対策に関する研究を行う。
 本プログラムは、3つのプロジェクトで構成される。プロジェクト(1)では、広域的な生物多様性の状況を効率的に観測する手法を、特にリモートセンシングによる景観把握および分子遺伝学的アプローチを重点に開発するとともに、観測データの整備に貢献する。プロジェクト(2)は、日本全国スケールでの土地利用の変化に対する生物多様性の応答を評価・予測するモデルを開発し、生物多様性保全の観点から、効果的な国土利用デザインを評価する枠組みを構築することを目的とする。全国を対象に、10kmグリッド程度の空間単位で、生物の分布、物理環境、人間による土地利用などの空間明示的な分析を実施する。プロジェクト(3)は、生物多様性の劣化を招くとされる生物的要因(侵略的外来生物・遺伝子組換え生物)、および物理的要因(温暖化)の影響の実態を解明し、有効な管理施策を検討する。各要因がもたらす影響を統合的に評価するとともに、外来生物の防除、野生生物感染症の検疫、遺伝子組換え生物の分布拡大阻止、温暖化による植生変化に対する適応策など具体的対策手法を検討する。

今年度の研究概要

(1)国内の土地利用情報に関して、統一した基準で全国の景観基盤情報の整備を進める。沿岸域等の重点対象とする生態系或いは地域において、航空機観測やビデオ・定点カメラ観測を含む遠隔計測により取得されたデータの精度検証を行い、分類や変化検出精度の向上技術の開発やモニタリング体制の整備を行う。

(2)霞ヶ浦の優占藻類種培養株についてのDNAバーコーディング情報の整備に取り組む。ユスリカの種同定基準整備も引続き進める。淡水魚の遺伝的モニタリングに有効な遺伝マーカーを探索する。チョウ類の代表的種の緑地間移動頻度を遺伝マーカーを用いて推定する。ユスリカや褐虫藻の簡便な分類手法を開発する。また、次世代シーケンサーを用いて生物多様性解析の精度向上を行うための手法の検討を行う。

(3)過去からの変化が定量可能な生物多様性データの収集およびモデル化を推進する。また生物種の絶滅リスク評価の基盤となる、個体群の時間変化動態を定量的な評価法の開発を推進する。集積された範囲・期間・精度などが異なる様々なデータを統合し活用するための手法開発に取り組む。

(4)過去からの森林・農地など流域の土地被覆変化の定量化および将来シナリオの構築を進める。また、人口減少、大型草食動物の増加、気候変動など将来的に大きな変化が予測される要因の推定・予測値の計算・整理・統合を行う。その上で、さまざまな不確実性に対処しながら効率的な保全を実現するための評価モデルの構築を進める。

(5)外来昆虫の薬剤処理法を開発し、効果および安全性を確認する。確実に根絶できる薬量およびコストの算出を行い、防除モデルの構築を行う。国内外の防除事例データベースの解析により、成功確率を左右する要因分析を行う。鳥インフルエンザ全国モニタリングを実施中にインフルエンザウイルス陽性となった糞検体の鳥類種を特定する。

(6)GMセイヨウアブラナの生育密度が高い地域について、セイヨウアブラナの空間分布を調査する。調査地周辺の昆虫を採取し付着花粉よりDNAを抽出して除草剤耐性遺伝子を検出する。

(7)気候変動が高山生態系の生物多様性に及ぼす影響を把握するため、チベット高原の中部地域における長期モニタリング・移植実験を継続する。過去から現在にかけてのサンゴ分布データの収集を進め、海水温と群集や代表種など指標の高度化を行い、気候変動モデルに反映させる。

課題代表者

竹中 明夫