- 予算区分
- AH 地環研
- 研究課題コード
- 1213AH003
- 開始/終了年度
- 2012~2013年
- キーワード(日本語)
- 窒素飽和
- キーワード(英語)
- nitrogen saturation
研究概要
窒素飽和とは、水源となる森林が窒素過剰状態に陥り、渓流への硝酸性窒素(NO3–N)流出量が増大する問題である。公共用水域へのNO3–N流出量増大は、水源水質の劣化、湖沼や内湾の富栄養化、さらには健康被害をも引き起こす危険性がある。近年、関東地方の森林でも窒素飽和が顕在化しつつあり、その改善が望まれている。栃木県でも、平成23年度に県央西部で渓流水質を調査した結果、スギやヒノキの人工林集水域において、窒素飽和の目安とされる値、つまり平水時の渓流水中NO3–N濃度が1 mgN/Lを超える集水域が多数確認された。栃木県では、荒廃している人工林を管理して森林の持つ公益的機能を回復・維持するため、平成20年度から「とちぎの元気な森づくり県民税事業」により積極的な間伐が進められており、その効果を検証する必要がある。以上より本研究では、継続的な森林整備が森林の公益的機能(水質浄化機能)の発揮に重要であるかを明らかにするため、間伐と窒素飽和の関係に着目し、継続的に間伐を行った人工林集水域では、そうでない集水域に比べ、渓流水へのNO3-N流出量が少ないかどうかを現地調査により明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:
全体計画
窒素飽和が起きていると考えられる栃木県鹿沼市の人工林地域から、調査地として継続的に間伐を行った集水域(間伐林)と、そうでない集水域(放置林)を選定し、主に雨水と渓流水の水質モニタリングを行う(2012年度)。得られた結果から、この地域の森林が窒素飽和状態にあるかを評価する。また、各集水域の植生データや地形データを整備して間伐状態を数値化し、先の水質データとあわせて、間伐林は放置林に比べ渓流水へのNO3-N流出量が少ないかを評価する(2013年度)。
今年度の研究概要
2013年度は前年度に取得したデータの解析と成果発表、必要に応じて追跡調査を行う。まず、各集水域の植生および地形データを整理して、間伐林と放置林の特性と間伐状況の違いを数値化する。次に、本研究の目的である継続的に間伐を行った人工林集水域では、そうでない集水域に比べ、渓流水へのNO3-N流出量が少ないかどうかを明らかにするため、平水時の渓流水中NO3-N濃度の変動を間伐林と放置林で比較する。同時に、両集水域について、窒素飽和の目安とされる2つの項目、つまり1)林内雨の無機態窒素流入量>10 kgN/ha/yr、2)平水時の渓流水中NO3–N濃度>1 mgN/Lについて検討する。
外部との連携
共同研究者:荻原香大(地環研の研究代表者)、平野真弘、大森牧子(栃木県保健環境センター化学部)
- 関連する研究課題
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- 0 : 地域環境研究分野における研究課題