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ヒト多能性幹細胞試験バッテリーによる化学物質の発達期影響予測法に関する研究(平成 25年度)
Studies of prediction methods for effects of chemicals on development periods in a test battery using pluripotent stem cells

予算区分
DA 厚労−厚労科研費
研究課題コード
1214DA001
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
胚性幹細胞,ドーパミンニューロン,ハイスループット
キーワード(英語)
embryonic stem cells, dopamine neuron, high throughput

研究概要

我が国においてiPS細胞を中心とするヒト多能性幹細胞の応用研究は、医科学上のみならず環境保健学上においても特に推進すべき重点領域である。分化細胞をin vitro毒性試験へ応用することは、早期に実現できるものとして期待されている。多能性幹細胞の利点は発生の極めて初期の生体内の発生全過程を再現できる点にある。胚性幹細胞試験は国際的にも発展しつつある分野であるが、ヒト細胞を用いた場合の実用性の高い評価系の報告はまだ少ない。これまでに確率推論モデルを応用した種々の化学物質影響予測法の開発に取り組んできた。考案した新規概念であるマルチパラメトリックプロファイリングネットワーク(Multi-parametric profiling network)は、細胞や個体発生過程における化学物質の曝露初期の遺伝子変動が、成熟後に生じると考えられる病態や表現型にどのように影響を及ぼすのかを数理的に予測(確率推論)する方法である。
 本研究では、確立されているヒト多能性幹細胞を用いた神経細胞等の分化培養系、ならびに肝細胞分化培養系を新たに導入し、同一環境、同一曝露系による比較解析を行う。使用する全てのヒトES細胞ならびにiPS細胞を遺伝子改変でハイスループットイメージング用に加工し、複数のドナー株ならびに系統株を同一線上に配置した曝露試験によるマルチプルな解析を行う。予測法としては確率推論を融合したサポートベクター回帰法を適応し、これにより「ヒト多能性幹細胞試験バッテリー」を構築する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

平成24〜25年度:イメージングならびにセルソーティング可能なマーカー遺伝子導入細胞株の樹立
 神経細胞の樹状突起マーカーで細胞骨格タンパクであるMap2ならびにドーパミン神経特異的マーカーとなるTH遺伝子のプロモーターをGFP発現ベクターでコンストラクトを作成し、遺伝子導入して株を樹立する。

平成25年度:引き続き、ドーパミン神経特異的マーカーとなるTH遺伝子のプロモーターにGFP発現遺伝子を連結させたプラスミドを細胞に導入し、イメージングならびにセルソーティング可能なマーカー遺伝子導入細胞株の樹立を完成させる。分化マーカー遺伝子のGFP発現をもとに神経細胞・肝細胞の形態観察を経時的に行う。ディッシュ上の生細胞での蛍光観察が可能であるため、同一ウエル同一視野の経時的観察が可能である。各種形態情報(細胞数、蛍光陽性面積、神経突起長、分岐点数等)を測定する。

平成26年度: 遺伝子発現情報と形態情報の統合化(ベイズ解析)
マルチパラメトリックプロファイリングネットワークは、細胞や個体発生過程における化学物質の曝露初期における遺伝子変動が、成熟後の病態や表現型異常にどのように影響を及ぼすのかを確率推論でネットワーク化する独自の評価手法である。各分化細胞の発生学的時間軸を考慮した化合物影響の統合的スコア化を行う。さらにマルチパラメトリックプロファイリングネットワーク手法で複数の化合物に対する多能性幹細胞の反応性(変動遺伝子)とその後の分化に及ぼす影響(晩発的影響)を化学物質ごとにネットワーク情報を整理し、分化培養時の極めて初期に化学物質で変動する遺伝子データからその後の晩発影響を予測するサポートベクター回帰法を試みる。

今年度の研究概要

引き続き、ドーパミン神経特異的マーカーとなるTH遺伝子のプロモーターにGFP発現遺伝子を連結させたプラスミドを細胞に導入し、イメージングならびにセルソーティング可能なマーカー遺伝子導入細胞株の樹立を完成させる。

外部との連携

本研究は、「ヒト多能性幹細胞試験バッテリーによる化学物質の発達期影響予測法に関する研究」(研究課題代表者:大迫誠一郎准教授 東京大学大学院医学系研究科)の分担研究として実施する。

備考

本課題は、課題代表者である東京大学 大迫誠一郎 准教授の分担研究として実施した。

課題代表者

曽根 秀子