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環境計測研究分野の概要(平成 26年度)
Environmental Measurement and Analysis

研究課題コード
1115FP080
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
環境標準物質,残留性有機汚染物質,環境トレーサー,生体応答計測,遠隔計測
キーワード(英語)
Certified Reference Materials, Persistent Organic Pollutants, Environmental Tracers, Biological Imaging and Analysis, Remote Sensing

研究概要

環境の状態の把握、状態の時間的・空間的な変化の監視、過去の変化の解明、将来の環境変化の予兆の検出、新たな環境悪化の懸念要因の発見・同定とその評価などに関する様々な環境研究を支えるための環境計測手法(計測データの分析・解析・活用手法なども含む)の開発・高度化に関する研究や計測手法の整備、体系化に関する取組を推進する。同時に、環境ストレスに対する生体影響評価のための計測手法の開発、計測データを総合的に分析するための情報解析手法の開発・高度化や計測データ質の保証と管理を目指した調査・研究を実施する。


(1) 環境分析精度管理の基本となる環境標準物質の作成を進めるにあたり、PFOSの認証値決定のためにフッ素系界面活性剤分析手法の確立を図る。また、水銀条約の締結に伴い今後環境分析での活用が期待される水銀同位体比精密測定について、精度管理手法の確立を目指して基礎研究を進める。地方環境研究所との共同研究を進め、湖沼中のミクロシスチン分析手法の標準化の検討を行う。


(2) POPsを含む各種有機化合物についてのモニタリング手法、迅速分析法、網羅分析法の開発や分析対象媒体の拡大を目指して、GCxGC-HRTofMSによる環境および生体試料の精密質量測定を実施し,データベースの作成とハロゲン化合物を中心とした解析法の開発を行う。 LC-HRTofMSによる化学物質代謝物などの一斉分析法を検討する。誘導体化GC/MSによる大気粒子や発生源粒子の有機多成分分析を開発し、組成に基づく発生源の評価や大気浮遊粒子の動態解析への応用を検討する。


(3) 無機元素同位体計測技術の高度化を目指して、分析試料の前処理法を含めた水銀安定同位体や放射性炭素同位体分析法の開発・高精度化を進めて行くとともに、その他の無機分析技術(微量分析法、X線分析法、質量分析法など)の改良と環境分析への応用を実施する。さらに、将来にわたり環境分析に必要とされる環境試料の保存を引き続き進めていき、高精度な分析データの提供とその評価に貢献する。


(4) 商船を利用した太平洋表層水の炭素同位体比測定を継続し、放射性炭素データの解析から西太平洋における大気—海洋間の二酸化炭素交換量の地域的な相違を把握する。また、大気−陸域生態系間におけるVOCの動態解明に資するため、植物個葉や森林群落などにおけるVOCフラックス計測手法について検討を進める。


(5) 環境ストレスに鋭敏に応答する脳神経系への影響評価手法として、MRIを用いたヒト脳計測手法の開発と高度化ならびに、動物行動試験手法と化学分析の組み合わせでの基礎的条件検討を推進する。MRIでは、ヒト脳非侵襲代謝物測定法の高度化を行い、興奮性、抑制性の神経伝達物質測定を実現する。動物脳内物質分析法では、これまで開発してきた有機ヒ素、神経伝達物質などに加え、新規検討する低分子代謝物(グルタチオン等)の一斉分析手法の実現を目指す。これらに加えて、MRIを用いた底泥内構造測定を推進し、酸化還元と内部構造との関連を探る。


(6) エアロゾルおよび雲の光学特性やエアロゾルの種別判定のためのライダー手法の開発研究を進めるとともに、地上ライダーネットワークの標準化と高度化に関する研究を進める。また、衛星搭載ライダー(CALIPSO, EarthCARE)の検証と衛星観測データの継続性の確立を目指して、多波長ラマン散乱ライダーおよび高スペクトル分解ライダーを含む地上ライダーネットワーク観測を行うとともに、スカイラジオメーターと複合したデータ解析を行う。さらに、高機能ライダーのデータを化学輸送モデルに同化するための手法の研究を行う。


(7) 大量かつ多次元の環境計測データからの環境情報の抽出手法開発ならびに生物分布や生態系の変化を観測する各種計測手法及びそのデータ処理手法の開発に向けて、様々なプラットフォームから観測された高分解能画像や熱赤外画像、地上の定点からの時系列画像等からの情報抽出に必要な技術開発を行なう。特に高分解能画像による野生動物等の行動監視、定点撮影時系列画像による植物の季節変化や積雪状態の監視、可視域レーザーやステレオ撮像による沿岸海底地形計測及びそのデータを利用した光学画像の水深補正/底質分類といった従来研究では取り扱われることの少なかった分野に重点を置く。

課題代表者

今村 隆史